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前回から引き続き、キャラバン『RLソックス・シリーズ』の徹底レポート後編です。
左右それぞれの足に合わせ、しかも立体成型 キャラバン『RLソックス・シリーズ』(後編)
(前編はこちら)
左右で組み合わせを変え、機能性をチェック
ざっと3種のソックスをチェックした後、実際に履き比べを行なってみた。
しかし、ソックスというものは製品の比較が難しい。製品ごとに別の日にテストをすると、その日の気温によって吸汗性や速乾性に違いが出てしまったり、合わせる登山靴によっても使用感は大きく変わってしまったりするからだ。
そこで、テストは晴れた秋の日とし、合わせる登山靴は以前にレポートしたグランドキングの『GK85』に限定。そして、左右で違うソックスを履き、数回のテストを行なった。ただし、このレポートで使う写真はわかりやすさを考えて、1つの山で撮影したものに限定している。
そんなわけで、まずはアンダーカーフ(左)、マダラックス(右)という組み合わせだ。
足を入れただけでわかるのは、アンダーカーフがかなりタイトにフィットするのに対し、マダラックスは締め付け感が少なく、緩やかにフィットするということである。
歩行中もその感覚は継続したままだ。アンダーカーフはたとえ登山靴のヒモの締め付けを少し緩めたとしても足へのフィット感はほとんど変わらないが、マダラックスは内部でずれる感じがいくらか出てくる。もっとも、通常のようにきちんとヒモを締めておけば、マダラックスもずれることはないのだが。ソックスの弾力性はアンダーカーフよりも厚手のマダラックスのほうが高く、ふんわりと足を包み込むような感覚で、ただでさえフィット感が良好な『GK85』をさらに心地よく履くことができた。
丸一日履いていると、どちらのソックスもかなりの汗を吸収している。このとき、生地が湿った感じが強いのは、アンダーカーフのほうだ。これはおそらく足にタイトにフィットすることで、足がかいた汗を吸い取り切っているからであろう。
それに対し、マダラックスのソックス自体の湿り具合は、アンダーカーフほどではない。だがソックスを脱いだ足は、アンダーカーフよりも湿り気を帯びている。要するに、汗を吸い取る能力はアンダーカーフのほうが上のようなのである。
ただし、吸汗性は優れるものの、アンダーカーフのフィット感は強めなので、窮屈に感じる人はいるかもしれない。どちらがよいのかは人それぞれだろう。
次にマダラックス(左)、メリノ・レトロ(右)。
先ほどアンダーカーフとマダラックスを比較したとき、締め付け感が少ないのがマダラックスだと記したが、メリノ・レトロはそれ以上に緩やかな履き心地だ。これは柔らかなウールを中心とした素材だからだろう。
しかし、ソックスの上から登山靴を履き、靴紐を締めると、それらふたつの差はあまり感じられなくなる。メリノ・レトロの緩やかな履き心地は、あくまでも登山靴を履かないときの感覚なのである。
それよりも、マダラックスとメリノ・レトロの明確な違いは、丈の長さである。
今回合わせたGK85はアキレス腱の部分のみ低くカットした形状のハイカットタイプで、どちらのソックスでも支障なく履けた。だが、真冬用の登山靴ではアッパーの丈がもっと高いものもあり、そういうタイプには短めのマダラックスでは長さが足りない可能性がある。それに加え、メリノ・レトロのように長いタイプのソックスのほうが、高い保温力を持つことは言うまでもない。
最後に、メリノ・レトロ(左)とアンダーカーフ(右)。
どちらもすでに別の組み合わせでは試しているが、改めてチェックしておきたい。
両者の違いは、やはりフィット感だ。登山靴に足を入れるとき、タイトめのフィット感のアンダーカーフはするっと入っていくが、メリノ・レトロは設計にいくらか余裕がある分だけ、わずかながら生地がよれ、ソックスの位置を微調整しなければならない場合もあった。
反対に登山靴を脱いだときにわかるのは、いかにアンダーカーフが足に強くフィットしていたかということである。
テント内でソックスだけの状態になると、アンダーカーフがもたらす締め付け感から解放されたくなり、ソックスを早めに脱ぎたくなる。だが余裕のあるメリノ・レトロならば、そのまま履き続けていても違和感は少ないのである。もうひとつ確認できたのは、テント内でこのまま両方のソックスを履き続けていると、アンダーカーフのほうが早くドライになっていくこと。さすが速乾性に優れる化学繊維を主体にした製品である。
シチュエーションに合わせて選ぶ、多様なソックス
そんなわけで、比較してみた3種のソックスだが、すべて十分に登山に適した機能を持っており、大きな短所は見当たらなかった。はっきり言えば、登山時の歩行性を大きく左右するような極端な差はないということである。
もちろんここまで書いてきたような細かな差はあり、あとは自分の用途や好み次第だ。
3種のうち、どの製品を手に入れても支障なく快適に歩けるだろう。だが、もう少しなにかの参考になるように、もしも僕が3種類を使い分けるのならば、それぞれどのようなときに履こうと思っているのか、一例を紹介したい。
歩行性を中心に機能性を考えれば、「RL HGアンダーカーフ」だ。
登山靴内でのずれがまったくなく、吸汗性に富んでいてドライな感じが長持ちするのが、すばらしい。登山後にテントや小屋のなかでも履いていたり、帰宅まで着用し続けたりするにはフィット感が強すぎる面もあるが、行動中に関していえば、3種のなかでもっともさわやかな履き心地である。
山行後にソックスの履き替えが出来るようなら、イチ押しのソックスと言えるだろう。
テント泊山行のときに使用したいのが「RLメリノ・レトロトレッキング」だ。
歩行中に履くのもいいが、行動後に履き替え、テント内で防寒のために使うのにも適しているからである。歩行中はアンダーカーフを履き、メリノ・レトロは雨天時の濡れなどに備えたサブソックスとして用意しつつ、テント内の防寒ソックスとしても活躍させる……なんていう使い方もよさそうである。
数日にわたる登山や、汗をかきやすい夏場には「RLドラロン・マダラックス」だ。
なんといってもデオドラント加工が頼もしく、長く履き続けたり、汗をたっぷり吸っていたりしても悪臭が発生しにくいからだ。小屋のなかでソックスをむき出しで履いていたり、サンダルと合わせて表面に露出させていたりしても、他の人の迷惑にはならないはずである。メリノ・レトロよりも丈が短く、保温性が高すぎない点も夏場向けだ。
いくら耐久性を高めた製品であっても、長時間歩行に使用する登山用ソックスは消耗品だ。クッション性がヘタってきたり、摩耗したりして傷んできたら積極的に新しいタイプを試していくのも楽しいものである。その結果、自分にぴったりのものが見つかれば、それ以降の登山はますます快適になるに違いない。
(前編はこちら)
文・写真=高橋庄太郎
今回、ソックスのフィールドテストを行った際に履いたグランドキング『GK85』のインプレッション記事はこちら。
今回レビューした商品
RLメリノ・レトロトレッキング ¥2,640 (税込)
カラー:103チャコールグレー、232ワイン、583フォレスト、
678デニム
サイズ:S(22.0-24.0cm)、M(24.0-26.0cm)、
L(26.0-28.0cm)
※232ワインはS・Mのみ
RL HGアンダーカーフ ¥2,200 (税込)
カラー:131グラファイト、256チリ、583フォレスト、
686コバルト
サイズ:S(22.0-24.0cm)、M(24.0-26.0cm)、
L(26.0-28.0cm)
RLドラロン・マダラックス ¥1,650 (税込)
カラー:103チャコールグレー、245ロッソ、483クルミ、
679ストーンデニム
サイズ:S(22.0-24.0cm)、M(24.0-26.0cm)、
L(26.0-28.0cm)
※245ロッソはS・Mのみ