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第4回目は、最新型のレキ トレッキングポールを2タイプレビュー。“伸縮式”と“折りたたみ式”の個性が異なるタイプは、それぞれどのような特徴があるのかを徹底チェック!

「伸縮式」と「折りたたみ式」、どちらが好み?それぞれの個性が光るレキのトレッキングポール(前編)

僕はかれこれ20数年もの間、ずっとレキ(LEKI)のトレッキングポールを愛用している。初めて使ったものはグリップがT字型をしたものだったが、現在はグリップがI字型の一般的なタイプだ。使い慣れれば慣れるほど登山が楽になるのがわかり、とくに荷物が重い場合や難路では頼りにしている。

使い始めたころのことを振り返ると、当時の製品はシャフトがかなり太く、それなのに折れやすく、重かった。錆やすいのも難点だった。それに比べれば、現代のモデルは素材もデザインも洗練され、その進化ぶりには驚くばかりである。

そんなわけで今回は最新型のレキのトレッキングポールを試してみた。しかも同時に2タイプで、ひとつは“伸縮式”でシャフトの素材はアルミニウム仕様の「マカルーライトAS」、もうひとつは“折りたたみ式”でシャフトの素材がカーボン仕様の「マイクロバリオ カーボン」だ。これら2タイプは、収納する際のシステムや素材などの個性は大きく異なる。まずはそれぞれのトレッキングポールの特徴を確認しておきたい。

伝統的な“伸縮式”の進化版。「マカルーライトAS」

はじめにピックアップするのは、マカルーライトAS。先ほど述べたようにシャフトの素材は航空機にも使用されている強度の高いアルミニウムで、重量は462g(2本組)である。

ほぼ同じ長さのシャフトが3本で構成され、最大に伸ばすと130㎝、最短(収納時)で66.5㎝という伸縮式である。

シャフトの直径はグリップがついているもっとも太い上段シャフトが16㎜、中段シャフトが14㎜、先端にチップがついているもっとも細い下段シャフトが12㎜だ。

それぞれのシャフトの接合部分には、レバー開閉だけで緩み、長さを自在に変えられる“スピードロック2システム”を採用している。

このスピードロック2システムの締め付け具合は、ダイヤルを回すことで調整できる。緩くしていると使用中に少しずつトレッキングポールが短くなっていきかねないが、強く締めすぎるとレバーが動きにくくなるので注意したい。

だが、この調整はレバーの反対側にあるダイヤルを回すだけなので、簡単だ。指先だけでも調整できるが、より強く締めたい場合はコインのようなものをダイヤルの溝に引っ掛ければいい。
もっとも、強く締めすぎるとレバーが破損する恐れもあり、親指の力でレバーが操作できる程度の強度が適正であることは覚えておいて欲しい。

中段と下段のシャフトには2.5㎝ごとに線が引かれ、長さ調整の目安となっている。ここで注意したいのは、それぞれの線は2.5㎝ごとなのに対して印されている数字は5㎝刻みということだ。

これは、中段と下段の2段それぞれで2.5㎝ずつ動かせば、2.5×2=5㎝という長さ調整ができるということ。中段、もしくは下段のみしか調整しないと数値通りの長さにはならず、シャフトの強度も落ちてしまうので、必ず双方をいっしょに調整したい。

現代の主流の“折りたたみ式”。「マイクロバリオ カーボン」

次に「マイクロバリオ カーボン」。シャフトの素材はカーボンで、重量は480g(2本組)だ。

こちらは最大に伸ばすと130㎝、最短で110㎝、収納時は3分割して40㎝の長さで収納できる”折りたたみ式”である。3本のシャフトの太さはグリップがある一番上が18㎜、次に16㎜、先端が14㎜と、マカルーライトASよりもわずかに太い。

グリップ近くのシャフトには“エクスターナル・ロッキングデバイス”が付けられている。これは指で押すだけでラチェットを解放できる仕組みで、使用時にまっすぐ伸びてテンションがかかっていたトレッキングポールのロックを外し、すばやく折りたためるようにする工夫だ。

従来のモデルではポピュラーな、金属の小さなボタンを押してラチェットを開放する方式よりも格段に簡単で、とても優れたシステムだと感心する。山中ではトレッキングポールが引っかかりやすい険しい岩場を通るときや、ハシゴやクサリがあって両手を空けておきたいときなど、トレッキングポールを一時的に収納したくなる場面は多い。そんなときにこのように簡単に折りたためるのは非常に便利で、行動中にもストレスを感じないですむ。

シャフトはクリアチューブ・コードで連結され、不用意にバラバラになることはない。

ただし、折りたたんでいるときにこの接続部分に砂などが付くと、うまく連結できないばかりか、破損の恐れも出てくる。非常に丈夫な造りではあるが、この点は注意したい。

マイクロバリオ カーボンには、収納袋も付属している。

土などで汚れた先端部も覆い隠すことができ、なかなか便利だ。

バスケットやプロテクターなど、優れた機能はどちらも共通

ここからはマカルーライトASとマイクロバリオ カーボンに共通する点をチェックしていく。写真はマイクロバリオ カーボンのものを使っているが、そこに特別な意味があるわけではない。

どちらのモデルも先端には金属製の石突きがあり、地面に深く突き刺さらないように取り外し可能なリング状のバスケットが付属している。通常はこの付属バスケットを取り付けたままで使用するが、雪山では大型の“ツアリングバスケット”(別売り)に変更すると、先端が雪中深く刺さる心配がなくなるので季節やシーンに応じて換装したい。

この石突きの部分は非常に鋭利だ。バスケットをつけていても不必要なほど地面に突き刺さり、木の根や植物を傷めたり、地面を崩したりする可能性がある。そのために、通常はゴム製のプロテクター(キャップ)である“スリップレスラバーロング”を装着した状態で使用するのが望ましい。だが、植物や地面を傷めることがない岩の上では石突きを露出させて使ってもよい。また、雪上ではプロテクターをつけていると雪面に先端が刺さらないので、雪山では外して使用するのがセオリーだ。

石突きを露出して使う場合でも、移動中には先端を保護できるよう必ずスリップレスラバーロングを装着しよう。日本で販売されているレキのトレッキングポールには、このスリップレスラバーロング(写真左側)が標準装着されているが、実は日本以外ではキャップのみ(写真右側)で販売されている。
これは長年レキを扱うキャラバンが特別オーダーして標準装着させた、日本特別仕様だ。
周囲の人やモノにぶつかっても安全で、こういう細かいところにメーカーの配慮が表れている。

このバスケットだが、先ほどの写真をよく見るとバスケットに1か所、窪んだ部分があるのがわかるだろうか。

折りたたみ式のマイクロバリオ カーボンの場合、収納時にはこの部分に折りたたんだシャフトをはめ込んで軽く固定できるのだ。地味な点だが、収納時にかさばりにくくもなり、思いのほか効果的である。このポイントのみ両者共通ではないが、ご紹介しておきたい。

ところで、レキでは“スリップレスラバーロング“と呼んでいる先端に付けるプロテクターだが、以前は地面を突いて歩いているうちに外れやすく、そのままなくしてしまうことも多かった。これは他メーカーも同様で、山中に落としたプロテクターは環境を汚すゴミとなり、僕はけっこう大きな問題だと考えていた。

だが、現在のレキのプロテクターに関していえば、使用中に脱落する心配はほとんどなくなった。じつこのプロテクター、以前は短かったのだが現在はロング型になっており、より深くはめ込められるようになっているからだ。さらには内部に金属のリングを内蔵しているため、これが石突きとしっかり連結し、ますます簡単には外れない。これまで僕は山中に落ちているプロテクターを見つけるたびに拾い、ある山行のときは1日で20個以上も回収したこともある。だが、ここ数年はレキのプロテクターを拾うことはほとんどなくなった。これまた非常に地味な点だが、じつはものすごい進歩なのではないかと思っている。

1㎜程度の厚みで肌へなじむ“スキンストラップ”

手首にかけるストラップは、数年前から採用されている“スキンストラップ”である。以前のレキに採用されていたトレッキングポールのストラップはもっと分厚く、ガッシリしたものだったが、それに慣れていた僕はこのスキンストラップに変更されたとき、とても心配だった。荷重を加えると手に食い込むような気がしたのだ。

しかし、それは杞憂だった。文字通り、皮膚のように薄いストラップは肌によくなじみ、ねじれないようにさえ気をつけて使えば、とても使い心地がいい。まさに“肌=スキン”のような感覚だ。この使い心地のよさは、今回ピックアップした2モデルでも変わらない。ただし、夏場に大量の汗を吸い込むと少々硬くなることはある。その場合は水につけて揉みほぐし、汗による塩分を流し去れば再び柔らかくなり、改めて快適に使うことができる。

グリップに固定されていたスキンストラップは、ストラップを上に引き上げるとロックが解除され、長さを楽に調整できる。

素手のときと、グローブを使うときとでは、適したストラップの長さはかなり変わってくる。そのときの自分の手に合わせ、理想的なサイズ感で使ってほしい。

後編に続く

文・写真=高橋庄太郎

今回レビューした商品

マカルーライト AS ¥19,800 (税込)

カラー:550グリーン 全1色
サイズ:66.5〜130㎝
重量:約462g(組)

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マイクロバリオカーボン ¥22,000 (税込)

カラー:660ブルー 全1色
サイズ:110-130cm(収納時40cm)
重量:約480g(組)

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