第一回目はクライミングとの出会いから、
お互いの印象、オープン派かクリンプ派か等々、
興味深い話題をお聞きしました。

Interview 01「クライミングとの出会い」

公開日:2020年4月27日

── 今日はお二人に根掘り葉掘り聞いていきたいと思います。よろしいでしょうか?

村井隆一(以下、村井) 野村真一郎(以下、野村) はい

── 自己紹介かねて名前、身長、体重、リーチ、年齢を教えてください。

村井 村井隆一です。身長は167 cmで、体重は58kgぐらいです。リーチは173cmですね。年齢は25歳です。

野村 野村真一郎です。身長が159cmで、体重53kg、リーチが164cmぐらいかな。23歳です。

── 二人とも身長プラス5、6㎝くらいですね。身長とかリーチとか、気になることはありますか?

村井 まあ、苦労はしますね。やっぱりコンペだと。国外のワールドカップとかだとどうしても……。

── 活躍している選手は、やっぱり170cm以上みたいなイメージはありますよね。

村井 そうですね。日本代表のなかでは、たぶん僕が一番小さい。楢﨑智亜君が169cmとか……「ギリ170cmない」って言ってたかな。でもリーチ長いんですよね。180cmくらいあるって言ってましたね。

野村 僕がたぶん一番、低身長。クライミング界で一番低いレベルなので、逆に何の課題をやっても、もはや気にならない感じでした。でも最近ちょっとそういうリーチ課題に出くわすことが増えてきて、今、また繊細な部分から考え直してます。トレーニングの仕方とか。

── 体重の管理はしてますか?

村井 あんまり食生活とかはこだわってないですけど、やっぱりコンペ前とかツアー前とかだけ軽く絞ってます。普段の体重よりもちょっと増えてたら、制限はしますけど、ルーティン的に意識してっていうのはないですね。

野村 僕もそんなに……。むしろ、身長の割合からすると重い方なので、あんまり関係ないのかなって思いますけど。調子のいいときは絞れているような気はします。あんまり(食事制限)やるとモチベーションが下がるから、普通に食べたいですね。

子どもの頃に出会ったクライミング

── クライミングを始めた「きっかけ」から話してもらえますか?

村井 クライミングを始めたのは小4だから10歳ですね。今、15~16年目とかです。きっかけは、もともと山登りから始まって、親と一緒に登山してたんですけど、山登りの一環で、父親がクライミングをはじめて。で、クライミングジムがちょうど近くにあって、それが船橋ロッキーなんです。そこの環境が良かったっていうのもあって。最初は山から入ったんですけど、山のために始めたクライミングにのめり込んで、そっちがメインになっていった感じですね。

野村 僕は、たまたま神奈川から茨城に引っ越したときに、その引越し先にちょうどスポーレ(クライミングジム)があって、親がアウトドアスポーツみたいなのが好きで。それで、父親に連れていかれて始めたんですけど、そのときは水泳もやっていて、水泳が嫌いすぎて……逆にクライミングが楽しくて。

村井 わかるかも。僕も水泳やってたから。

野村 水泳が嫌いで、クライミングやったらおもしろかったんです。まあ、始めたときはジムでキャッチボールとかやっていてよく怒られていたんですけど、JOCに出たくらいのときから真剣にやるようになって。自分のシューズを持った頃からちゃんとやるようになりました。

── 引っ越ししてから始めたっていうのは何歳くらい?

野村 それが小2ですね。僕も15年くらいです。多分、(村井君と)おんなじくらい。

村井 小2から?すごいね。

野村 いや、でも、小6ぐらいまではやってないようなもん(笑)。週1で楽しんでる感じでした。

── 二人ともユースの大会からクライミングにハマっていった感じですか?

村井 そうですね。僕の場合は、ロッキーには同い年の子が多かったんで、練習をみんなで一緒にやっていて。飯田さんっていう方がコーチで、まとめて指導してトレーニングとか考えてくれて、それでコンペを目指してやっていった感じですかね。

── ユース世代の子って大会を目指すのがスタンダード?

村井 最初はやっぱりそうじゃないですかね。ただ意味もなく練習していても、やっぱり何か目標がないと。モチベーションをぶつける対象が欲しいっていうか、そういうのがあったほうがより強くなりやすいですね。

大人になり魅了された岩登り

── 岩を登り始めたのはどれくらいからですか?

野村 岩は3年くらい前。それまでは全然、岩も行かずに、インドアやってたんですけど、たまたま豊田に行ったとき、「アガルタ(V14)」と「バビロン(V15?)」が登れて、それからですね、岩に行き始めたのは。それまでは二子山とかにちょっと行ったことあるくらいで、でも全然登れなくて、「弱えな」とか思ってました。

村井 自分も同じ感じ。中学校、高校もちょいちょい行ってはいたんですけど、本当にたま~に何ヶ月かに一回行くぐらいで、全然、ガッツリって感じではなかったです。2015年かな。大学2年か3年生ぐらいのとき、超久々、2年ぶりぐらいに神戸(ボルダー)に行って、確か2回目だったんですけど、久々に「オロチ(V15)」ちょっとやってみるかって言われてやったら登れて、それからのめり込んで、みたいな。

野村 おんなじだ。

村井 もともとは岩とか、全然、登り方とかわかんないし、足(フットホールド)がとにかく悪いし見つからないしって感じで、すごく苦手意識あったんですけど…。

野村 ああ、たしかに。あったな、俺も。

村井 時間が空いてまた来てみたら、やっぱりこう…印象が変わって。

── それはおもしろいですね。これを読む人達にとって二人に対する印象はまるで違うのではないでしょうか。少なくとも岩のボルダリングに関してはスペシャリストみたいに思われているでしょうから。

野村 今はそうかな。昔はマジで、岩に行ってみただけの人だったから(笑)。でも、もともとのスタイルは合ってた気がする。保持系は好きで。

世界一の指と世界一のヒールフック

── お互いの印象はどんな感じですか?

村井 とにかく、ノムシンは指が強いっていうイメージは誰もが持ってると思うんですけど、単純に指先でいったらカチ、特に下引きかなあ。下引きのクリンプは本当に、マジで世界一強いんじゃないかな(笑)。

あとは小柄だけど、どうしても足残さないといけないみたいな、もう足離れると落ちちゃうような課題とか、足を残すのがうまい。身体張力がかなり優れてますね。見た目の大きさ以上に大きく見える登りは、かっこいいと思います。

あと、トウフックが物凄く上手いっていうのはありますね。小山田(大)さんのジム(プロジェクト)で登ってるっていうのはあるのかもしれないけど、とにかくすごいなって思いますね。

野村 それは、手が長くて足が短いからっていうのがなくもない気がする(苦笑)

村井 トウ掛けたときとか見ていて、参考にしたいけど、あんまり参考にならない。どうやって掛けているのか、よくわかんないです。

野村 りゅうさんは、一番強いんじゃないですか、今。特にメンタルが凄い気がする。強いのは知ってたんだけど、「つなげ」がとにかく上手いというか。決めきれるし。それこそスイスでも、(ムーブを解析して)できるって思ったらつなげが早くて、パッと登れるから、「え?」みたいな。「ホントに?」みたいな。

最近、鳳来に行くようになって「モナ・リザ(V14?)」と「白道(V15)」をやってみて、つなげるのって結構難しいと感じました、あれは。この2つはつなげが大変そうだなっていうか。他の人がなかなか決めきれないのを、そういうのも早く決めちゃう感じ。ムーブができれば、つなげが早い。

あとはもう圧倒的にヒールフックがヤバい。ヒールはもうよくわかんないです。ヒールフックは世界一ですね。

村井 自分の苦手なところが、逆にノムシンは得意なイメージです。トウフックだったり、足残しだったり。

野村 逆のタイプなイメージは、僕も結構あります。なんか、りゅうさんの動画しかないんですよね、もう、岩でやりたいやつが…。で、ちょっと観てみるんですけど、絶対マネできないから、結局、あんまり意味なくて。

あと、保持の仕方もちょっと違うんですよ、僕は小指巻き込んでクリンプで持つのが好きなんですけど、りゅうさんは(指を)伸ばしてオープンハンドで登っていくじゃないですか。手堅い登り方してるなって感じ。そこはすごく勉強になる。

オープン派、クリンプ派

── 小山田大さんの3mmエッジでのトレーニングって話題になりましたが、あれも野村君はできます?

野村 3mmは、もうイケるようになりました。気合で。

村井 3mmって、もはや保持なんですかね。

野村 いや、気合だと思う。なんかもう、あんまりね、正直、意味ない。(小山田)大ちゃんは、それ以上になんか違う能力があるから。でも、りゅうさんと大ちゃんの保持は似てますね。3本指で伸ばして取る感じ。

── 村井君はオープンハンド?

野村 オープンですね。

村井 逆にクリンプできないですね。

野村 大ちゃんとおんなじこと言うんですよね。

村井 たぶん、もうクセだと思う。本当に、小学生からの。ずっとオープンで持ってたから。小指の力の入れ方を理解しないまま時が進んでいって。

野村 ホントに俺と逆だ。こうやって(ホールドに手を伸ばす仕草)入ってるけど、「え?」みたいな。「こうじゃないの?」みたいな。

── クリンプ派とオープン派の違いですね。

村井 そこはトレーニング環境とか、いろいろ違いがあるかもしれないですね。

野村 最近3本指のオープンハンドを練習してて、ある程度良くなってきたけど、やっぱ怖い。力が入らないからケガしそうで。

村井 リーチ的にはやっぱり3本の方が。

野村 3本の方が絶対いいし。それは最近気づいた。

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