第二回目は自分のクライミングについての短所・長所などを
掘り下げてお聞きしました。

Interview 02「自らの長短を探る」

公開日:2020年5月4日

── お互いの印象はおもしろいですね。今、自己分析の話しも出てきましたけど、自分のクライミングの得意な部分と、逆に苦手な部分ってありますか?

村井 傾斜でいえば、強傾斜の方が得意ですね。スラブとか垂壁は、結構、苦手なほうに入りますね。
長所、ん~、ま、でも、ヒールはやっぱ自分でも武器だと思ってますし、困ったらヒールかけちゃうんで、逆にちょっと(ヒールフックに頼りすぎて)フィジカルが心配になるなってときは一時ありましたけど。ヒールに自信があるっていうのと、あとコンプレッション系は好きかもしれないですね。

── 挟み込み?

村井 挟み込むような。でも苦手なものの方が多いですね、個人的には。単純に足を使う系のムーブがすごく苦手で、足っていうか脚力。ランジとかコーディネーション系は見ての通りです。あとは、ちょっとカラダが硬いんで、足上げが人よりも全然上がらないんで、そこで……。

── カラダ硬いんだ!

村井 硬いですね。

── 意外です。ヒールフックを多用するから柔らかいのかと思ってました。

村井 ヒールのときだけは、たぶん腕で引いてるからかな。上がるんですけど、単純にこうポジション変えずに足だけ上げるっていうムーブが、めちゃめちゃ苦手なんで、スラブでそういう感じが出ると本当にできないですね。そうですね……短所はとにかく足。脚力と体の硬さ。

── この話はコンペのルートセッターには聞かせたくないですね(笑)。

村井 そうですね!

「つなげ」の早さ

── 多くの人が村井君に対して、高難度課題を短時間で(レッドポイントに)成功している印象をもってると思います。

村井 たしかに一回バラせた課題は、比較的早く「つなげ」に成功している感じはしますね。

── 持久力があるとか、そういうことですか?

村井 いや、持久力ではないと思うんですけど、なんだろう……。自分でもよくわかんないですね…。いかにバラしたムーブを楽にできるかっていうのを発見して、一番楽な登り方ができればそれでつながるんで。でも、あんまり意識はしていないといえばしてないですね。なんかバラせたら「それはできる」ってことだから、つなげちゃうだけだなっていう。「バラしたけど、これからつなげるのか」っていうよりも、「バレたから、じゃあ、あとはつながるわ」っていう、結構、ポジティブな気持ちになるっていうのも関係してるかもしれないですね。

── 野村君の場合はどうでしょうか?

野村 やっぱ、リーチは悩みではあるとは思います。まず、人とムーブが違うんで、課題の中で自己分析しないと絶対できないっていうのはあるんで。リーチの分を補える長所としても、やっぱりフックとか足残しとか、指の力とか……片手でぶら下がれないとどうしようもないっていうか、そういう考え方を最初にしたんで。結構、リーチっていうのを大前提の短所として、それを補う長所を作っていってるイメージ。だから今、3本指も短所として自分の中で挙げていて、それを長所に変えたいなと思ってます。
鳳来とかってあんまり握り込めないホールドが多いんで、ポケットだったり。最初は塩原とか豊田とかみたいに、クリンプ主体の高難度課題があるところに行ってたんですけど、この一年はちょっと短所を克服したいなっていう意味で。最近はちょっとそこが上がってきているのか、前より対応できるようになってきて、そこはいいかなって。自己分析しながら登ってますね、常に。

── そもそも他人とムーブが違うと。

野村 スイスツアーも成果はなかったけど、すごくいい経験になってます。「Off The Wagon(V14)」とかも、まあ、やっぱり3本指でバッて取らなきゃいけないっていうのは苦手だってわかってたけど、それに対して準備できなかった部分もあったんで。届いてはいるんで、できるはずなんですよ。それはなんとかするしかないから。そういう考え方だから、あんまりその長所と短所がどうだからって、あんま考えたことはないかな。

「モード」に入る

── 全国的に野村君の名前がすごく有名になったのは、塩原の五段クラスを1日で3本登った記録です。あれって手数も多いじゃないですか。1本登るっていうだけでもダメージがあると思うんですけど、それを1日で登り切るのってかなりスタミナが必要なのでは?それが普通にできる理由って、なんだと思いますか?

野村 調子いい日と悪い日の差も結構あって、それがなんか本当に最初のアップの時点でわかるというか。で、あの日は本当に調子よくて。「ハイドランジア(V15)」って、結構、人生目標だったんですよ、自分的に。それに向けてすごく準備してきたっていうのもあったのか、むちゃくちゃ調子よくて。
そういう日ってリードが調子よくて、あんまりこう……腕が張らなかったんですよ、その日。だから「ハイドランジア」よりは「バベル」と「UMA」ってムーブは悪くないから、なんか今日はイケるなっていう「モード」に入っていたというか。

── すごいですよね、普通に考えて。「できる人いないでしょ」みたいな。

野村 あの日以降、何日かはあるけど、ばっちり岩にハマる日っていうのはなかなかなくて、そのアプローチの仕方もちょっと分析しなくちゃいけないんだろうけど、なかなか難しいですよね。りゅうさんは逆に、あんまり波がないイメージ。

村井 なんか僕はあんまり気候とかに左右されないかもしれないですね。いつも同じようなパフォーマンスは出せるようにしている感じ。なんていうのかな……たしかに調子がいいときと悪いときって、あまり差はありませんね。難しいな……なんで登れるのかわかんない(笑)。人に説明が……。自分でもあんまよくわかってないから。どう説明すればいいんだろう。

野村 見ててもわかんない。

村井 登れるときと登れないときって何が違うんだろうみたいな。

野村 いや、あんま変わってなくない?なんか、りゅうさんって「あ、今日登れるわ」みたいなこと毎日言うんですよ。「え?今日めちゃくちゃ岩濡れてんじゃん」みたいな(笑)

村井 もう慣れました、雨。(スイスツアーでは)ひたすら雨でしたからね。

── コロラドに「The Game(V15)」を登りに行ってたときも、初日、雨とか雪でしたよね。

村井 そうですね。濡れているとつなげは無理ですけど、そのなかでもできるパート、全部が全部濡れるわけじゃないんで、そういったところをその日のうちにしっかり固めておいて、別の日にまたイケそうなところをって感じで組み立てておけば、あとは「つなげるだけ」って感じになるんで。

── 必殺技、「つなげるだけ」。

野村 やべー、マジで。

村井 コンディション悪いときにバラしやっといたほうが、コンディションが回復したときに、メチャメチャやりやすくなる。こんなん持てるじゃんみたいな。「Off The Wagon」とか、晴れた時にもう一回やった(笑)。

野村 めちゃくちゃ普通に登ってた(笑)。

── 2回登ってるんですか?

村井 トップアウトしてないですけど、キャンパのところまでは行きましたね。キャンパしてマッチのところまではいったんですけど、全然感じが違いましたね。

── 登ったときって、あのスリットのところも濡れてたんですか?

村井 登ったときはビショビショでヤバかったですね。トップアウトまで7分くらい、ずっとレストしてて。本当はそういうときはやらないほうがいいのかもしれないですけど、ツアーにくるとモチベーションが上がっちゃうんですよね。日数も限られてるのもあるんですけど。限られたなかでしっかり組み立てをしないと……雨の日でも。

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