TRI-CAM
CAMP社のトライカムはカムナッツの設計における長年の研究の成果として生み出されました。あなたはトライカムがこれまでに使用した人工チョックストーンの中で最も多用途に使用できる製品だということに気付くでしょう。
少し練習すれば、通常の状況やエキゾチックな状況でトライカムを簡単に安全に片手でセッティングできるようになります。トライカムは、従来のナッツが機能する箇所にプロテクションとして設置できるだけでなく、ナッツではプロテクションとしてセッティングできない箇所にもセット可能です。トライカムのデザインにより、2本の平行なカムレールがクラックの片面に対して2点の支持になり、クラックの反対面に支持ポイントが接触し安定した三脚が構成されます。この三つの支点は、スリングに下向きの荷重をかけることでしっかりと固定できます。トライカムは墜落後も簡単に取り外せます。底の浅い平行クラック、水平方向の外向きのフレアクラック、ボンベイのフレアクラック-すべてにトライカムのセッティングが可能です!11の重なり合うサイズは、10mmから140mmまでのクラックに適合します。サイズ0、125から4のトライカムは熱鍛造され、サイズ5、6、7はプレス加工です。ボディは、ステンレス鋼のスリング保持ピンを備えた航空機用アルミニウム合金です。各サイズのトライカムにはソウンスリングが付属されています。
Why Tri-Cams?
スプリング荷重式のカムは便利ですが、いくつかの欠点があります。機械的な複雑さにより、破損しやすい傾向があります。製造コストにより価格が高くなります。カムウォークによりクラックの奥深くに移動してしまうことがあり、さらに回収に手間取ることがあります。スプリングカムは、通常のナッツがセッティング可能な箇所の多くでは使用できません。トライカムは、実際に機能するワンピース構造のカムナッツです。
Method of placement(セッティング方法):
Normal(通常):
トライカムは、通常のナッツとしてくびれのないクラックで非常にうまく機能します。(図A)。カムチャネルによって、岩の凹凸やしわにまたがるため支持ポイントとの三点支持構造により、ほとんどの場合、従来のナットよりも安全なセッティングが可能になります。常に両方のカムレールが岩に接触していることを確認し、反対側の支持ポイントとあわせて必ず三点支持がなされていることを確認してください。
Figure A

Standard(標準):
垂直に平行もしくはフレア状のクラックに、図B のようにトライカムをセットします。スリングをカムチャネルに沿わせて下げ、トライカムを固定します。支持ポイントをセットするための岩の凹凸を探します。(これは絶対に必要というわけではありませんが、多くの場合、セッティングがより安全になります)。トライカムを固定するためにスリングに適切な荷重をかけます。
Figure B

Horizontal(水平):
図C.水平(または斜め)のクラックでは、トライカムの支持ポイントを上に配置するか下に配置するかを選択できます。どちらの方法もすべての状況で最適というわけではありません。セッティング箇所の真上に登っていく場合は、支持ポイントを下向きにセットすると最高の安全性が得られることがあります。それ以外の場合(セットからトラバースもしくは斜上する場合)は、支持ポイントを上向きにセットすることが最善です。しかし、これには厳格なルールはありません。
Figure C

Tight Fit Camming(タイトフィットによるカミング効果):
平行のクラックには、トライカムを使用できる追加の効果的なカムモードがあります。図Dのように、トライカムが図示されている状態でタイトにしっかりとはまると、小さなカム効果が発生し、十分なプロテクションが得られます。
Figure D

Other Placements:(その他のセッティング):
トライカムは、凍ったクラックや氷や岩によって形成されたクラックに使用する場合に利用できる最も安全なプロテクションです。スリングとカラビナだけの重量で、カムショルダーが氷に接触するまで支持ポイントが氷を溶かして入っていくため、できるだけ大きなサイズのトライカムを使用するようにしてください。ビレイ中はこのことを考慮し、氷と岩の間で使用されるトライカムに長時間の荷重を加えないでください。トライカムは、岩のポケット、フレアしたクラック、フレークの中などで非常によく機能します。ただし、カムレールと支持ポイントの両方が岩と接触し三点支持を確認することを常に忘れないでください。そうでない場合、トライカムは不安定になります。
Leading(リードクライミング)
クライミングのリード中にトライカムのセットをトレーニングすることはやめてください。トライカムのセットにはある程度の慣れが必要です。ハーケンを使ってきたクライマーがナッツに切り替えるというような場合と同じです。 始めナッツは安全性に欠けるように見えても、使用し、慣れてくるにつれて、ナッツの利点に確証がもてるようになってくるものです。
Racking:(ラッキング):
サイズ0.125、0.25、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、および4のトライカムは、カラビナにひとつずつもしくは複数をラッキングできます。しかし、大きいサイズは、カラビナをスリングとカムショルダーの近くにあるチャンネルピンをクリップすることによってうまくラッキング出来、トライカムが膝の周りにブラブラするのを防ぐことが出来ます。(図Eを参照)
Figure E

One Handed Placement(片手でのセッティング):
片手でラックからトライカムを取り外し、カムチャネルにスリングを沿わせる必要な動きが自然に来るまでトレーニングを行ってください。このことは難しいリードクライミングを行う前に必ず習得しなければならないスキルです(図F)。
Figure F

Directional Considerations(方向性に関する考慮事項):
トライカムは、くびれのあるクラックで通常のナットとして使用する場合、カムレールがキーとなって不規則性を排除できるため、ほとんどの従来のナットよりも方向安定性が高くなります。 ただし、一部のセットで標準のカムモードで使用する場合は、二つのトライカムを相対させて慎重にセットする必要があります。落下の力がロープによって、上部のナットだけでなく、下のナットにもどのように伝達されるかを考慮する必要があります(図Hを参照)。
ナットツールまたはハンマーで「くさび」として1~2 回下向きにタップすることで、トライカムをより確実に固定することができますが、これはトライカムをハーケンとして使用することになります。 トライカムを「タイトフィットする」状態で使用すると、非常に安全で、スリングにしっかりと固定すると、かなりの外向きおよび上向きの力にさえ耐えることが出来ます。
Figure H – Vertical Placement

Constant Tension Loops:(テンションループ):
2インチ(約5cm)の長さの軽量なバンジーコードで結ばれたループを3〜4点携帯することをお勧めします。これらのループは、相対で使用されるトライカム(またはトライカムと別のアンカー)間でお互いに一定の張力をかけるために使用できます。(図Gを参照)
Figure G – Shallow Horizontal Crack Placement

Aiding(エイドクライミング):
トライカムは非常に素早くで効率的に使用できます。 それらは、フレークに挟んだり、様々形状のポケット、フレアクラックなどで非常によく機能します。
Belaying(ビレイポイントの構築):
トライカムでビレイポイントをセットアップするときは、通常のナットとして使用するか、「タイトフィット」方式でカムとして使用してください。これらの方法により荷重によって向きが変わることを防げます。タイトフィットが見つからない場合は、標準のカムモードで2点を使用し、相対させます。(これにはテンションループが役立つことが多いです。)
TRI-CAM Performance on Various Rock Types(さまざまな種類の岩質でのトライカムのパフォーマンス):
すべてのタイプの固い岩で、トライカムは非常にうまく機能します。しかしそれらは完璧ではない岩に時間を費やす登山者にとって特殊な場合と言えるでしょう。 墜落によるせん断力を膨張する力に変換するトライカムの機能(標準モードで使用した場合)により、真砂土や柔らかい砂岩、および多くの湿ったまたは氷のような高山の状況でも利用できる最も安全なプロテクションとして使用出来ます。 脆い岩質でのセットでは、クラックに合う最大サイズのトライカムを使用します。 ただし、非常に緩いフレークや積み重ねられた岩のブロックの間では、標準のカムモードで使用しないでください。そのようなフレークを外したり、ブロックをこじ開けたりする可能性があります。
A Caution(注意):
フリークライミング中、標準のカムモードでセットされたトライカムは、足で踏んだり、または直接つかんだり、肘、腕、または足で触れてカムを解除することで、簡単に外れてしまいます。エイドでトライカムの直接の助けが必要な場合は、スリングだけをつかみ、セッティングが適切な方向にのみ荷重をかけてください。適切なカム効果が確実に適用されます。
Sling Replacement and General Maintenance (スリングの交換と一般的なメンテナンス):
トライカムのスリングは、他のナッツと同様に、定期的に交換する必要があります。日光からの紫外線は、目に見える損耗がわずかであっても、最終的にはパーロンやナイロンを弱めます。トライカムを使用していないときは、日光にさらさないでください。縫い目の状態には特に注意してください。縫い目のいずれかの側に重大な摩耗が見られる場合は、スリングを交換してください。ステッチの損耗は、粘着テープを巻くことで大幅に防ぐことができます。図Iは、トライカムの縫製スリングを、同じまたは同様のサイズと織りのウェビングを結ぶことで交換する適切な方法を示しています。トライカムのカムレールを紙やすりまたはやすりで滑らかに研磨し、支持ポイントが丸くなった場合は、工場出荷時の状態まで削ってください。
Figure I

Testing(テスト):
スリングの強度についてトライカムの各生産ロットは抜き取りサンプルによってテストされています。さらに、トライカムは実際の使用によって徹底的にテストされています。
Stacking(スタッキング):
クライミングのプロテクションとしてそうすることは推奨されていませんが、トライカムの#5、6、および7は、図Jに示す構成でうまく重ね合わせることが出来ます。大きいサイズの2つのチャネルピンの間に、常に次のサイズの小さいトライカムの支点を積み重ねます。したがって、#5を#6に積み重ね、#6を#7に積み重ねるか、または3つすべてを直列に積み重ね、#5を#6に、#7に積み重ねることができます。
Figure J

TEST A
トライカム#5を岩と氷のクラックでテスト。氷は11.2kNで壊れたがトライカムには大きな変化は見られませんでした。

TEST B
トライカム#3をわずかに下向きにし、花崗岩のフレアしたクラックにセットしテスト。15,3kNでクラックより引き抜かれました。スリングに多少のほつれ(縫い目部分では無い)を示した他に大きな変形はありませんでした。

TEST C
トライカム#3をボンベイ珪岩穴にてテスト。12.5kでホールから脱落しました。トライカムの大きな変形はありませんでした。

トライカム 鍛造モデル(NO.0.125~4)
- スティンガー
- スリング保持ピン
- 支点レリーフカット
- ボディ
- 平行カムレール
- 支点削り出し部分
- 支持ポイント
- 軽量化のための穴
- スリングチャンネル
- 縫製スリング
- カムショルダー

トライカム プレス加工モデル(NO.5,6,7)
- スティンガー
- スリング保持ピン
- 支点レリーフカット
- 軽量化のための穴
- 縫製スリング
- 支点屈曲部分
- カムレール
- 支点ピン
- 支持ポイント
- スリングチャンネル
- チャンネルピン
- カムショルダー

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