「キャラバン登山教室」や「キャラバン沢登り体験会」の様子などを体験ブログとして紹介している【~ 登歩道(とほみち) ~】ですが、残念ながら昨年度来、新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止判断が続いてしまっています。
※8月まですべてのキャラバン登山教室/キャラバン沢登り体験会が中止、9月以降の再開については現在検討中。
そのため前回に続き“番外編”として、普段なかなか目にする事のできないソール張り替えの現場『シューズ・リペアルーム』の様子【後編】をご紹介したいと思います。
前編はこちら登歩道 番外編【後編】≪シューズ・リペアルーム≫
概要
場所:キャラバン シューズ・リペアルーム
内容:登山靴 / トレッキングシューズ / 渓流シューズ / その他シューズ全般、ソール張り替え修理ほか
工房:修理預かり・・・状態確認・・・熱溶解剥がし・・・補修修理・・・接着加工・・・仕上げ処理
ソール張り替え作業
次は別の補修・修理ラインで進められていた別の登山靴、グランドキング『GK30』の様子を見てみましょう。
張り替え用のソール。貼り合わせ位置を事前に確認し、しるしを施していく。
当然のことながらサイズ展開の数ぶんだけ張り替え用ソールも存在しています。たった0.5㎝の違いでも合わなくなるので、慎重に位置合わせの確認をするのが大事だとか。
次は、接着面にそれぞれ接着剤を塗っていく工程です。
塗布量は少な過ぎても剥がれの原因になってしまうし、多過ぎてもダメとの事で適量が大事とのこと。適量はどれくらい?と質問してみたところ、『これくらいだよ』と。。。
目分量で塗布しているようにしか見えない適量加減が、すでに職人技の証。
長い年月を感じさせる接着剤の入った瓶。
意外と思うかもしれませんが、接着剤として用いられるものは一種類だけではありません。
アッパーの足裏底に塗布するのは別の容器に入った接着剤を使用しているそうです。
これもまた、日々使っているのが伝わってくる使用感です。
トロみのある接着剤を薄く塗るしぐさが手早い。
双方に接着剤を塗布し終えて、いよいよ圧着工程に入るかと思いきや、実は接着剤の表面が乾き出した頃合で一度熱を加えて接着剤を温めます。
それをおこなうことで接着力が高まり圧着した後、剥がれにくくなるとのこと。
思っていた以上に手間のかかる作業が続きます。
すぐに圧着せず、しばらく接着剤が落ち着くまで寝かせた状態。
別のオーブンで塗布した接着剤を温めて、接着力を高めている。
トウ部分のトップエンドを合わせてから、アッパーの足裏底面とミッドソール部の合わせ位置部分を確認しながらソールを接着していきます。
合わせ位置を決めて丁寧にソールを接着していく。
前後左右の位置関係を確認しながら、中心位置に合わせて貼り合わせる。
まずは手でソールを貼り合わせます。その次に圧着機を使って圧力を加えていきます。
枠にはめてスイッチを押すと前後左右はもちろんのこと、上からも下からも全方位から圧力が加わり登山靴全体をソール面に押し当てていきます。
これで完成かと思うかもしれませんが、実はまだまだ作業工程は残っています。
次に側面をシャープナーでバフ掛けをおこないます。
ミッドソールとアウトソールが一体化させるとともに、バリなどの凹凸を削ります。
削られたラバーが粉のようになり、手を真っ黒にしながら側面を削っていきます。
ゴムが焦げるようなニオイをさせながら削られていく。
新品のアウトソールは、ブロックパターン1つ1つの角が立っている。
最後の仕上げ処理
次は最後の仕上げ処理です。
ミッドソールとアッパーの接着部分を目視で確認しながら、接着剤で均一に隙間を埋めていきます。接着面のアッパー側面は湾曲しているため、フチまでピッタリとは接着されません。隙間が開いているように見えていても、接着はしっかりおこなわれています。
でも、どうしても接着面のフチに隙間が開いているように見えることで剥がれてくるのでは?と心配される方もいらっしゃるので、気になるであろう箇所を丁寧に接着剤で埋めていきます。
なかなか地味な作業を黙々と続けていく。
また、シューズ・リペアルームにはソール張り替えの作業ラインの他に、縫製部分などの糸ほつれ修理をするための補修材料や機材が多数あります。
例えば縫製修理に使うステッチ糸の数々に、アッパーを部分縫いするための強靭なミシンなど。
ステッチ糸は複数の糸番手(太さ)とともに、アッパーカラーに合わせた糸色を用意している。
登山靴は様々なシチュエーションやフィールドで履かれるので、時には岩稜帯や木の枝に引っ掛けてステッチ糸が切れたりもします。それだけではなくフックやDカンを破損することも。そんな時に備えて、「登山靴 / トレッキングシューズ」や「渓流シューズ」に応じた補修パーツも複数用意されているのが嬉しいですね。
それは、登山靴メーカーとしてキャラバンシューズが多くの方々に“愛用されている証”でもあり、売って終わりではないメーカーの姿勢の表れとも言えます。
シューレースの引っ張り方を誤るとフックが破損する事もあるので、修理も多い。
修理依頼で送られてくる箱は、実に大小さまざまな箱に入って送られてきます。間違いが発生しないように1つずつに管理No.を貼り付け、修理の間、大切に保管しています。
すでに部屋の一角を埋め尽くすほど大量の修理箱が積まれていました。
所狭しと積み重ねられた、預かり修理品箱の数々。
ソール張り替えを終えたグランドキング『GK30』がこちら。
新品ソールに生まれ変わった登山靴がお客様の手元に戻り、『またこの登山靴を履いて、山登りを楽しんでいる姿を想像するのが好きです』。
そう笑顔で答えてくれた職人さんの言葉が印象的でした。
ソール張り替えを終えたばかりのグランドキング『GK30』
シューズ・リペアルームでのソール張り替えの様子は、いかがだったでしょうか。
登山靴は決して安価なものではありません。だからこそ、愛着をもって長年履いてもらえるよう私たちのキャラバンシューズは、可能な限り修理対応等にもお応えし、お客様に愛される登山靴(トレッキングシューズ)となるよう心掛けています。
これからも、末永くキャラバンシューズをご愛用いただければ幸いです。