Facebook YouTube Instagram

「伸縮式」と「折りたたみ式」、どちらが好み?それぞれの個性が光るレキのトレッキングポール(後編)

前編はこちら

片手ずつ異なるタイプを握り、山中でテスト

さて、これら2種のトレッキングポールの使い勝手はいかほどなのか、僕は実際に山中を歩いてみた。

両者の持ち味を比較するために、僕は左右それぞれ別のトレッキングポールを持ち、ときおり交換しながら登山道を歩いて行った。

歩いていると手の平にまで汗をかくほどの気温だったが、グリップは滑りにくく、ストラップは余分な汗を吸収し、手がベタつくことはない。

”伸縮式”、”折りたたみ式”という収納方法の違い以外で、マカルーライトASとマイクロバリオ カーボンの差が一目でわかるのが、この上段シャフトのグリップ部分である。

どちらも素材はEVAを使った“エルゴンサーモ・グリップ”で、軽量でいて握ったときに冷たさを感じないものが採用されている。ただし、その長さは両者で大きく異なっている。

必要十分な12㎝と余裕ある26㎝。長さが異なるグリップ

マカルーライトASのグリップはストラップをかけて握る部分のみで、長さにして12㎝である。

しかしグリップの凹凸が手のひらや指の形状にぴったり合い、軽い力でも楽に握れ、手からズレることがない。必要にして十分なグリップだと言えよう。

一方、マイクロバリオ カーボンのほうは26㎝もあり、ストラップを手から外せば、もっと下のほうを握ることもできる。

ストラップが手首にかかっていないので、よほど強く握っていないと荷重を乗せにくいが、歩行中に体のバランスをとるくらいのことなら十分だ。こちらのグリップは、プラスαの使い方もできるのである。

急斜面を長時間登り続けるときは、トレッキングポールの長さ自体を短く調整したほうが楽になるが、短時間であれば、このようにグリップの下のほうをもって歩くのもいい。

反対に急斜面を下るときには、どう使えばいいのか?

このときも山頂からの下山時など長時間下り続ける場合は、トレッキングポールの長さ自体を長めに調整し直すのがベターだ。

だが、同様に短時間ならば、以下のようにグリップの最上部を握り、簡易的にトレッキングポールの長さをアップして乗り切るという方法もできる。これはマカルーライトASもマイクロバリオ カーボンにも共通である。

ただ、手が大きめの僕は、この方法だと小さなグリップの先端が手からズレやすく、じつはあまり安定しない。また、使う人の握力にも大きく左右される。一度この方法を試してみて違和感なくトレッキングポールを操れる人のみが使える、そんなテクニックかもしれない。

地面からの衝撃を和らげる“アンチショックシステム”

トレッキングポールにかかる負担は、登り道よりも下り道のほうが大きい。大きな衝撃を受けるのは、決まって下り道だ。このときに役立つのが、地面からの衝撃を吸収する“アンチショックシステム”である。

マカルーライトASの「AS」とは、すなわち「ANTI SHOCK」。バスケットのすぐ上にあるグレーの部分には弾力があり、地面から衝撃を受けるとわずかに縮んで負担を和らげる。

僕はこのアンチショックシステムがとても気に入っている。アンチショックシステムの有無によって歩行力に差が出るほどではないのだが、地面に先端を突くたびに“カン、カン”という衝撃を感じるのはあまり心地よくはない。その点、アンチショックシステムが搭載されているモデルならば腕に感じる振動が大幅に減り、柔らかに使えて気持ちがいい。

このアンチショックシステム、今回テストしたマイクロバリオカーボンには搭載されていないが、じつはこれとは別に「マイクロバリオカーボンAS」というモデルも販売されている。価格と重量は増してしまうが、衝撃緩和の機能を求める人にはひとつの選択肢になる。

使い続けると差が出る?トレッキングポールの重量バランス

最後に確認したのは、トレッキングポールとしての重量バランスだ。単なる重量でいえば、マカルーライトASは1組(2本)で462g、片手(1本)では231gとなる。マイクロバリオ カーボンは1組480gで、片手では240g。その差はわずか9gしかなく、僕はこのくらいの差を感じ取れるほど鋭敏な感覚は持ち合わせていない。多くの人にとっても、この差はそれほど意味があるものではないはずだ。

とはいえ、それは単純な重量の話である。実際は先端部分が重いのか、グリップのほうが重いのかで、トレッキングポールを振ったときの感覚は大きく異なってくる。振ったときに遠心力がかかり、体感としての腕にかかる重さがかなり違ってくるからである。

以下の写真は、マイクロバリオ カーボンを前後に強く振ってみたときのイメージカットだ。

まったく同じことをマカルーライトASでも行ったが、写真の雰囲気はほぼ同様なので、ここでは省略させていただく。

両者で同じ動作を繰り返していて気付いたのは、実際には9gほど重いマイクロバリオ カーボンのほうがマカルーライトASよりも軽く感じるということだ。それはなぜなのか? トレッキングポールの構造を考えると、マイクロバリオ カーボンはグリップ部分のEVA部分は長いが、先端方向は非常にシンプルな造りで、シャフトが連結部分で重なっている部分も少ない。つまり重心がグリップ方向、つまり手元に寄っている。

一方、マカルーライトASは反対にグリップ部分がシンプルだが、スピードロックシステムが下のシャフトにも付いており、シャフトの連結部分の重なりも長い。だから、重心がマイクロバリオ カーボンよりも先端部分に寄っている。そのためにトレッキングポールを振ったときに重く感じるのだ。これはあくまでも僕の体感であり、山中では数値として測定できるものではない。しかし、おそらく間違ってはいないはずだ。

長時間使い続ける場合は、振ったときに軽く感じるマイクロバリオカーボンのほうが疲れは少なくなるかもしれない。とはいえ、その差はそれほど大きくはなく、使い慣れればほとんど気にならないものであろう。

素材に収納サイズ……。それぞれの持ち味を考える。

シャフトの素材も検討の余地がある。現在のレキのトレッキングポールは非常に丈夫で、そう簡単には折れないが、岩などに先端が挟まればテコの原理で大きな力がかかり、破損の恐れは生じる。このとき、アルミニウム素材は多少曲がっても簡単には折れない。それに対し、カーボン素材はわずかにしなる程度で曲がらないが、折れるときは真っ二つだ。また、アルミニウム素材は使い方によっては錆が生じるが、カーボン素材ならば錆ることはない。メインに使われる素材の好みによってもセレクトするタイプは異なってくるだろう。

収納状態での長さもセレクトの際には非常に重要だ。

マカルーライトASとマイクロバリオ カーボンの収納時の長さの差は26.5㎝。写真は容量30Lほどの小型バックパックのサイドポケットに取り付けたときのものだが、見た通りにマカルーライトASは上方へ出っ張っている。少々邪魔に思う人もいるだろう。日帰り登山がメインで、小型バックパックをいつも使っている方は、マイクロバリオ カーボンのように3本に折りたためるタイプのほうがいいだろう。だが、テント泊を好み、いつも大型パックを使うことが多い人であれば、マカルーライトASでもバックパックからあまりはみ出る部分はなく、むしろすっきりと収納できてよさそうである。

トレッキングポールは体を前進させる力をサポートするだけではなく、歩行時の体のバランスをとって疲れを軽減し、転びそうになったときに体を支えて怪我を防止する役目も持っている。今回はこんな2種を比較しながらテストしたが、レキには今回ピックアップしたタイプに限らず、グリップの径を細くした女性向けタイプなど、さまざまなモデルが用意されている。

これまで述べてきたこれら2種の特徴を踏まえ、あとは自分好みのものを選んでいけばいい。自分にとって使いやすいものを見つけられれば、それだけであなたの登山力は大いに向上するはずだ。

前編はこちら

文・写真=高橋庄太郎

今回、LEKIトレッキングポールのフィールドテストを行った際に履いたグランドキング『GK85』のインプレッション記事はこちら。

山登りの次なるステップアップを目指す登山愛好家が求め続けた、キャラバンシューズのDNAを受け継いだ高機能登山靴GRANDKING『GK85』を徹底レポート!

LEKIブランドの全商品一覧や、テクノロジー・特集ページの紹介はこちら


今回レビューした商品

マカルーライト AS ¥19,800 (税込)

カラー:550グリーン 全1色
サイズ:66.5〜130㎝
重量:約462g(組)

マイクロバリオカーボン ¥22,000 (税込)

カラー:660ブルー 全1色
サイズ:110-130cm(収納時40cm)
重量:約480g(組)

Facebook X
一覧へ戻る TOPへ戻る

商品のご案内やイベントなどの最新情報をお届けします!

メールマガジン登録