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大きな可能性を秘めたデクシェルの防水ソックス3選
アウトドアフィールドや雨の日対策で活躍する、デクシェル / 防水ソックス・シリーズのなかから3タイプを徹底レビュー。
各種シューズと合わせて、登山の快適性を格段にアップ!
大きな可能性を秘めたデクシェルの防水ソックス3選
アウトドア用のソックスとして一番はじめにイメージされるのは、厚手のウール製に違いない。なかには化学繊維を併用したり、編みの密度を変えたりして、部分的に生地の伸縮性を変え、サポート力などを持たせているものもある。とはいえ、他のウェア類に比べると機能性の違いというものが、あまり感じられないアイテムでもある。
そんななか、意外と知られていないのが「防水ソックス」というものの存在だ。現在いくつかのメーカーから市販されており、“ デクシェル ” はその代表格のブランドである。
同じ「防水」でも、それぞれに異なる個性
ここではとくに登山に適している3タイプを取り上げていこう。左から「トレッキング」「ウルトラシン クルー」「ランニング ライト」である。
アウター(表地)とインナー(裏地)はそれぞれ素材やその配合、厚みなどが異なり、それによって保温力に差が生まれている。5段階に分けた同社の基準によれば、「トレッキング」は4、「ウルトラシン クルー」は1、「ランニング ライト」は2で、このなかでは「トレッキング」がもっとも暖かい。一方、アウターとインナーに挟まれたライニングは、すべて “ ポレールメンブレン ” で共通だ。
この防水性と透湿性を併せもち、さらには4方向への伸縮性まで有しているポレールメンブレンと、アウター、インナーで構成される3層構造こそが、デクシェルの防水ソックスのポイントである。なお、ポレールメンブレンの蒸気透過率(WVP)指数は「15,000 g/m2.day」となっている。
このような防水ソックスは、どのように使えば登山がより快適になるのか? ここからは使用方法の一例を挙げつつ、テスト時の使用感についてお伝えしていく。
薄手で速乾、防臭性も併せもつ「ランニング ライト」
まずは、「ランニング ライト」だ。デクシェルの製品のなかでも薄手で、その名の通りトレイルランニングなどにはとくに適している。アウターにはナイロンを主体にポリエステルやポリウレタンなどを使用し、先ほど述べたように保温レベルは2となっている。
写真の下は、ランニング ライトをひっくり返して、白いインナーを見せた状態だ。このインナーはレーヨンとナイロンを使った撥水糸と防水糸をブレンドし、速乾性と保温性、防臭性に優れる “ ドライリリース ” というものである。
なにかと傷みやすいつま先に使われている生地は、ウール製のソックス以上に丈夫だ。
裏側のインナーもこの部分は厚手のパイル地でクッション性を強め、繊細なつま先を守っている。
甲から土踏まずは、ぐるりと一周するように生地の編みを変えてあり、伸縮性を強化している。
これによってフィット感が高まり心地よい履き心地になっている。
非防水性のトレランシューズとの組み合わせは?
今回、このランニング ライトに合わせて使用したシューズは、スコットの「キナバル2」。
防水素材をあえて使わず、通気性を重視したトレイルランニングシューズである。
最近は暑い時期を中心に、このように内部が蒸れなくて涼しいシューズで山に入る人も増えている。
だが、雨が降ってきたり、登山道が濡れていたりすると、ソックスまで濡れてしまい、不快な思いをすることも多いようだ。
この日は前日に雨が降った後の曇り空。登山道はすでに乾燥した場所も多かった。だが、ランニング ライトの実力を確かめるために、僕は積極的に湿った場所や水が流れる場所を歩いていった。
当初、僕はランニング ライトの防水性をダイレクトに感じようと、上の写真のようにランニング ライトは右足のみにして、左足にはウールの非防水ソックスを履いてみた。すると、濡れた登山道を歩いているだけで、左足のウールのソックスが次第に濡れていくことが身をもって体感できた。それに対し、ランニング ライトを履いた右足は、いつまでたってもドライなまま。さすがは防水ソックスだ。
水たまりを発見し、思い切って両足を入れてみる。
こうなると、水を通さないランニング ライトであっても、さすがに冷たい。とはいえ、その冷たさは、完全に水で濡れたウールのソックスの比ではない。やはり水分が肌に触れているのと触れていないのとでは、肌で感じる冷たさがまったく違うのであった。
いつまでも不快なまま行動していても仕方ないと、ある程度歩いたあと、僕は左足もランニング ライトに履き替えた。
やはりソックスというものは、ドライなほうが格段に気持ちいい。
シューズの水濡れを気にしなければ、安全に歩ける
さらに登山道を進んでいく。
両足とも濡れていいと思えば、沢のようなところでも躊躇なく入っていける。
水濡れを気にしないで済むと、沢筋の道では足を置く場所が増え、滑りやすい場所を避けられる。それがスリップ防止にもつながる。
防水性の副産物として、安全度も高まるわけだ。
先ほど書いたように、水に濡れれば足はいくらか冷たくなる。だが足自体は濡れていない。
だから、歩いているうちに乾燥してくると、すぐに保温力が戻ってくる。
デクシェルの防水ソックスは透湿性があるものの、通気性があるわけではない。だから、気温が高いときに履いていると、一般的なソックスよりも暑くすら感じることもある。
だから、無理にずっと履いていると内部が汗で湿ってくる。
テストのために、あえて暑くなってもそのまま行動していたところ、ランニング ライトの内部は汗で蒸れ、僕の足は少しふやけてしまった。
そもそも非防水性のトレランシューズは、通気性による涼しさを重視したものだ。濡れの心配がないときは一般的なソックスを使ったほうが快適で、濡れの恐れがあるときだけ防水ソックスを合わせるのが正解なのである。
こんな防水ソックスだが、水たまりのような「下から」の水には強いが、「上から」の水には弱い。雨などによってウェアや肌から滴り落ちた水は、足首部分から内部に流れ込んでくるからだ。
だから、降雨時はレインパンツで足首部分を覆うようにしたい。そうすれば防水ソックスはハイカットの防水性シューズと同じように、ソックス内の足を水濡れから守ってくれる。
防水ソックスとしては超薄手、「ウルトラシン クルー」
次は、「ウルトラシン クルー」だ。「ULTRA=超」「THIN=薄い」という通り、デクシェルのなかでは超薄手タイプで、保温レベルは1である。アウターはナイロン、レーヨン、コットンなどが使われ、インナーには通気性と吸水性に加えて抗菌防臭効果をもつバンブーレーヨンを使っているのがポイントだ。
同じ黒のためにわかりにくいが、写真の下はウルトラシン クルーをひっくり返し、インナーを見せた状態。この素材がバンブーレーヨンなのである。
次の写真は、つま先部分をひっくり返した状態だ。
たしかにランニング ライト以上に薄く、ソックス全体が均一の厚みである。
ウルトラシン クルーは超薄手タイプだけに、すべてがシンプルだ。
ランニング ライトのように伸縮させてフィット感を高めた場所はなく、ストレッチ性が高いのは足首部分のみである。
定番トレッキングシューズとの組み合わせは?
僕はこのウルトラシン クルーを、キャラバンの定番トレッキングシューズ「C1_02S」と合わせて履いてみた。
脛までの丈があるクルータイプは、「C1_02S」のようなミッドカットやハイカットのシューズと相性がいい。
足を入れてみても、シューズ内での違和感はまったくない。ウルトラシン クルーが超薄手といっても、それはあくまでもデクシェルというブランド内の話で、一般的なウールのソックスであれば少し薄手という程度である。だから、トレッキングシューズとも合わせやすいのだ。
しかし “ もともと防水性のシューズに、防水ソックスを合わせる意味はあるのか?” 不思議に思う方もいらっしゃるだろう。単純に考えれば、たしかにその通りである。
じつは、このテストでの僕の “ 状況設定 ” は「シューズ内が雨などですでにビシャビシャに濡れている」というもの。つまり、「内部が濡れたシューズに防水ソックスを合わせれば、足を濡らさないで行動できる」という発想である。
そこで歩き始める前、思い切ってシューズ内部にペットボトルから水を流し込み、ついでにシューズを水たまりにつけ、アッパーも完全に濡らしておいた。
内部までシューズが濡れていても、足自体はドライ!
そして、ウルトラシン クルーを履いた足をシューズ内に突っ込んで、出発!
一歩ごとにシューズ内にはグチュグチュという嫌な感覚が起きるが、テストのためだと思って我慢する。
時間が経つにつれて、シューズの表面は次第に乾燥し始める。しかし内部の濡れはもちろんそのままだ。
結局、丸一日歩いているうちに表面はだいたい乾燥した。
肝心のウルトラシン クルーは、シューズから移った水分でアウターこそ濡れているが、汗のせいか足裏は少しは湿っていたものの、内部はおおむねドライのままだった。
“ 内部まで濡れたシューズに防水ソックス ” という組み合わせは、かなり便利そうだ。はじめは一般的なソックスを履きつつ、防水ソックスをサブとして持っていき、いざというときに履き替える。というのも有効な利用の仕方であろう。
丈が長く、保温性も高い「トレッキング」
最後に「トレッキング」である。僕はこれを雪山で使ってみた。防水性以上に “ 保温力 ” に期待しての抜擢だ。このソックスのアウターの素材はほぼナイロンで、わずかにポリウレタンをプラス。インナーは暖かなメリノウールとアクリルにナイロンが加えられている。
厚みもたっぷり。写真の下のように裏返すと立体的に丸くなるほどだ。
ウールを使ったインナーの生地もふっくらとしていて、保温力レベルは4。ウルトラシン クルーやランニング ライトよりも格段に暖かく、夏場の登山で使うと暑すぎる恐れすら生じそうである。
また、足裏からかかとの面はパイル地でさらに厚みをもたせ、クッション性も向上させている。
かかとの前後が帯状に伸縮するのはランニング ライトと同様だ。
生地の厚みもあって、柔らかなカバーで包みこむようなフィット感である。
岩場向けのライトアルパインシューズとの組み合わせは?
トレッキングに合わせたシューズは、岩場向けのザンバラン「デュフール EVO GT」だ。
かかとにはセミワンタッチクランポンを取り付けるコバがついていて雪山もいけるが、真冬に使うには保温力が少し足りず、それほど寒くはない残雪期に適している。
しかし、ウールのソックス以上に暖かな「トレッキング」を組み合わせれば、真冬でも足先が冷たくならないのではないだろうか。
そんなわけで、「トレッキング」のテストは1月の東北の山で行なった。
それほど高くはない山で、このときはまだ積雪量も大したことはなかったが、さすがに東北の山は寒い。僕は日常生活でも足先が冷えやすく、街以上に寒冷な雪山ではつらい思いをすることも多いのである。
しかし、「トレッキング」を履いて歩いたこの日は快調だった。
厳冬期向けのシューズでなくても、足冷えはなし
おもしろかったのは、シューズから足を出したときに、わずかながらも湯気が立ったこと。
ポレールメンブレンの透湿性によって、ソックス内部の湿気が排出されていたからであろう。
ただ、保温性を期待して防水ソックスを履くときには注意も必要だ。発汗量が多いと足にかいた汗を排出しきれず、ソックス内部がだんだん湿り、ついには結露し始めたりする恐れもある。すると、内部の湿気によって、最終的には足が冷えていく恐れがある。だから、山小屋やテントに泊まったりする場合、行動終了後は別のソックスに履き替え、防水ソックスは裏返して乾燥させるのが望ましい。一方で、終了後すぐに別のソックスに履き替えられる日帰り山行のようなときは、いくら汗をかいてソックス内が湿っても関係なく、防水ソックスの保温性のメリットを気兼ねなく享受できるわけなのである。
テント泊のときは、サンダルといっしょに
さて、僕自身は以前から防水ソックスを愛用してきたが、じつは合わせるシューズでいちばん多いのは、サンダルだ。僕は高山でのテント泊縦走が好きで、山中のテント場ではいつもサンダルを使っている。そのときに防水ソックスを持っていくと、なにかと調子がいいのである。
ここではそんなテント泊時のイメージとして、リザードの「トレイル」とランニング ライトを合わせてみた。
テント泊は、1日の行動を終えてからなので、もはや汗はほとんどかかない。そのために歩行中に履いていたソックスから防水ソックスに履き替えてしまえば、もはや汗冷えの心配はなく、純粋に保温性を活かせる。防水ソックスは防風性も高いため、強風のときにサンダル履きでいても、足が冷えにくいのである。
下の写真はペットボトル内の水をランニング ライトにかけてみたものだ。
これほど濡れるシチュエーションはそうそうないだろうが、朝方、夜露で濡れたテント場を歩いているうちに、間違ってソックスを濡らしてしまう程度のことならたびたび起こり得る。だが、防水ソックスを履いていれば内部の足は濡れず、ドライな感覚を保っているのがいい。ウルトラシン クルーのところで説明したように、雨で濡らしてしまったシューズに合わせることもできるのだから、着替え用のサブとして防水ソックスを選んでおくと、なにかと便利なのである。
防水ソックスは、ポテンシャルが高い山岳装備だ!
防水ソックスはそれひとつで万能なわけではない。
一般的なアウトドア用ソックスとの併用、もしくは使い分けによって、実力を発揮してくれるものだ。反対に使い方を間違えると、高すぎる保温力によって汗をかく原因になったり、過度な湿気で汗冷えを起こしたりする可能性もある。どういう状況で、どういう使い方をすれば効果的なのか、自分の登山スタイルに合わせて考えてみることが必要かもしれない。しかし、その特性を理解したうえで利用すれば、大きな可能性を秘めている。うまく活用すれば、あなたの山中での大きな味方になるはずだ。
文・写真=高橋庄太郎
今回レビューした商品
トレッキング ¥5,940 (税込)
カラー/オリーブグリーン 全1色
サイズ/S(22〜24cm)、M(24〜26cm)、L(26〜28cm)
重量/約106g(Mサイズ標準/ペア)
ウルトラシン クルー ¥3,630 (税込)
カラー/190ブラック、546オリーブ、670ネイビー 全3色
サイズ/S(22〜24cm)、M(24〜26cm)、L(26〜28cm)、LL(28~30cm)※LLは190ブラックのみ
重量/約63g(Mサイズ標準/ペア)
ランニング ライト ¥4,180 (税込)
カラー/220レッド、660ブルー 全2色
サイズ/S(22~24cm)、M(24~26cm)、L(26~28cm)
重量/約74g(Mサイズ標準/ペア)