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新しいアウトソールとともに登場した「GK8X_FFF」
歩行時の不安が一気に解決、グランドキング/GK8X_FFFを徹底レビュー!
“ 進化する定番 ” とは、まさにこのこと!
新しいアウトソールとともに登場した「GK8X_FFF」

アウトドア用具、山岳装備の世界には、いくつもの「定番品」がある。しかし、定番品と呼ばれているからといって、発売開始のときとまったく仕様を変えていない製品はあまりない。どこかを改良し、改善し、リニューアルしながら販売を続けることで、定番品はさらに優れた定番品へと変貌していくのだ。
母体となる「GK8X」と「GK8X_FFF」の違いとは?
そんな定番品のひとつが、グランドキングの「GK8X」。このたび、この人気トレッキングモデルが仕様を少し変えてリニューアルし、名前も「GK8X_FFF」として登場! いっそう履きやすい一足に仕上がっている。
右手前がこれまでの「GK8X」で、左奥が「GK8X_FFF」。見た目上の特徴は、ほぼいっしょである。
とはいえ少し異なるのは、シューレース。GK8Xは細身の平紐を使っていたが、GK8X_FFFは丸紐になっている。
外見上から見て取れる違いは、その程度でしかない。
では、いったいなにが改善されたというのか?
それはズバリ “ アウトソール ” だ。キャラバンの刻印がオレンジ色の右側がこれまでの「GK8X」で、左のブルーのほうが「GK8X_FFF」。しかし、このように2足並べてみても相変わらず違いはよくわからないのだが……。
じつは、これらのアウトソールの違いは、形状やブロックのパターンではなく、一見ではわからない “ 素材 ” 自体にある。詳しくは後述しよう。
高機能トレッキングモデル「GK8X_FFF」の特徴を知る
では、改めてGK8X_FFFの特徴を見ていこう。
アッパーはしっかりと足首まで覆うハイカットタイプだ。不整地でも捻挫を起こしにくい。
そのアッパーは1.6㎜厚のスウェードレザーとメッシュポリエステルを使い分け、耐久性と軽量性、通気性の高さのバランスがうまくとれている。
その内側には防水透湿素材のゴアテックスが使われ、もちろん防水性と透湿性も十分だ。
つま先は合成皮革で補強されたトゥバンパーで覆われている。
かなり硬めの素材だが、それほどの厚みがあるわけではない。これによって安全性を高めながら、シューズが過度に重くなることは回避されている。
靴ひもは、各部によって数種類使い分けられたDリングやフックにかけられる。締め込むときには滑りがよく、スムーズに締め具合を調整できる。
先に述べたように靴ひもは細身の平紐から丸紐になり、これによってフックへのかかりがよくなっているようだ。
足首周りは柔らかなクッション性の素材でしっかりガード。見た目以上に張りがあり、足首をぐるっと覆って安定させている。足首が過度に左右へ傾くことも抑えられ、怪我の防止に大きく貢献している。
この写真は内部のインソールを外した状態だが、裏地がきれいに縫い付けられ、足なじみのよさがイメージできる。
次はかかとの部分だ。黒いアウトソールとアッパーの間のグレーの箇所がEVA素材のミッドソールである。
指で押すと柔らかに沈み込み、この部分のクッション性の高さがうかがえる。
アウトソールは「キャラバンFUJIKURAトレックソール」に、リニューアル!
そして、こちらが今回のリニューアルの核心部となるアウトソール。このたび新開発された「キャラバンFUJIKURAトレックソール」というものだ。
その特徴はラバーコンパウンド、つまりアウトソールに使われる各種ゴム配合材料の使用比率を変更したこと。それによって、従来のアウトソールよりも格段にグリップ力とフリクション(摩擦性)の力が高まっているのである。
ちなみに「FUJIKURA」とは藤倉コンポジット(旧 藤倉ゴム工業)のことで、同社は1946年には履物事業に進出した日本のシューズ関連会社の老舗。キャラバンとは1954年に市販化された「キャラバンシューズ」の時代からの関係性があり、キャラバンの親会社にもあたる一部上場企業だ。そのコラボレーションの最新作がこの「キャラバンFUJIKURAトレックソール」というわけなのである。
アウトソールを触ってみて感じるのは、その柔らかさと僅かながらの粘り気だ。この性質によって地面の小さな突起にアウトソールが食い込み、グリップ力の高さを生み出している。一方で、硬い岩にアウトソールが触れたときには強力な摩擦が生まれ、スリップをしっかりと防止してくれるのだ。
このアウトソールの素材以外の特徴は、各ブロックの間のミゾがかなり深いことだ。
前足部を見ると、ミゾの深さは5.0㎜ほど。これほどの深さがあれば、ぬかるんだ地面の上でも体を止められるだろう。
かかとも同様にミゾが深い。
素材が柔らかめで、かつミゾが深いと、着地したときに各ブロックは程よくたわみ、ミッドソールのクッション性とともに衝撃を受け止める。つまり衝撃吸収性が高まるアウトソールでもあるということだ。
また、GK8X_FFFはクッション性が高いアーチインソールを内蔵している(下の写真のグレーのもの)。これにより、インソール、ミッドソール、アウトソールという3種のコンビネーションで、高度なクッション性を実現している。GK8X_FFFはトレッキングモデルのシューズにしてはかなり頑丈な作りになっているが、それでも履き心地が硬すぎることはなく、クッション性をおろそかにしていないことがわかる。
ところで、グレーのインソールの隣に置かれているのは、付属のフルインソールだ。GK8X_FFFは日本人の足の形に合わせて比較的ゆとりのあるラスト(木型)を使っているが、それでは緩すぎるという方はこのフルインソールを重ねてシューズ内に敷くことでフィット感の微調整ができる。使用する場合は、いったんインソールを抜いてからフルインソールを下敷きにして重ね、そのままいっしょにシューズ内に戻すのだが、もちろん不要の方は使う必要はない。いずれにしても親切な付属品だ。
僕自身はそれほど足幅が広いわけではなく、GK8X_FFFをグレーのインソールだけで履くと少々緩い感じがしてしまう。
そこで、まずはフルインソールを右足だけに入れてみた。すると、右足のフィット感は申し分ないのに、左足はやはり緩い感じのままで気になってしまうのであった。
そのために、結局は両足ともにフルインソールをプラスした。
今回のテストはすべて、インソール+フルインソールの2段重ねで行なった。
「GK8X_FFF」に足を入れ、実際の山へ
歩き始めてすぐにわかったのは、GK8X_FFFの安定性の高さだ。全体的にがっしりとした作りのため、体が一歩一歩ぶれることがない。かかとの収まりもよく、歩行時にシューズ内部で足が浮き上がらないのも好印象だ。これだけ体のバランスをしっかりとってくれれば、足場が悪いところでも安心である。
実際、足元に岩が多い場所ではその安定感がますます光る。
斜めになった岩の上に足を置いても足首があまり曲がらないので、体が不意に傾くことがない。これは怪我の防止のほか、疲労軽減にもつながる。
トゥバンパーの働きも十分だ。
つま先をかなり強めに岩へぶつけてみたが、痛みを感じることもない。GK8X_FFFは全体的に硬めに作られていることもあり、つま先への衝撃がシューズ全体に分散されて和らぐような感覚だった。
登山道から外れて、大きな岩をよじ登ってもみた。
なるほど……。これがキャラバンFUJIKURAトレックソールの実力か!
この日は晴天で岩の上は乾いていたが、それを差し引いてもグリップ力とフリクション性はたしかに高いのがわかる。大げさに言えば、岩に張り付くような履き心地だ。
沢沿いの道でも試してみる。周囲には長年の水の流れで表面が摩耗した岩が点在していた。
「このつるっとした岩面ではさすがに滑るかな?」という岩の上でも、キャラバンFUJIKURAトレックソールのグリップ力は上々だった。あの粘り気が効いているのだろうか。
水で完全に濡れている岩の上ではある程度の滑りは出てくるものの、一般的なアウトソールよりは相当に高いレベルでスリップを起こしにくいようである。
岩の上、木の根の上、もちろん登山道でも安定
次は木の根が露出した下り道だ。
このような木の根の上はなにかと滑りやすく、それに加えて下り道では自分の体重によって足腰や膝に大きな負担がかかりやすい。
僕は坂道を下り始める前に、シューズのフィット感の再調整を行なった。下り道でのセオリー通り、登り道よりもシューズのフィット感を強めにし、足首まで緩みなく締め上げるのだ。シューズ内で足がずれると体の重心バランスが崩れ、転倒しやすくなるからである。
このとき、GK8X_FFFのフックの工夫が役立った。ちょうど足首の屈曲部に当たる部分のフックにはストッパー機能があり、そこに靴紐をかければ、まるで靴紐を結んだかのように緩みが止められ、フィット感がますます高まるのである。
このストッパー機能を持つフックは、下り道以外でも有効だ。登り道では足首からつま先の方向は強めにフィットさせつつ、足首からくるぶしまでは少し緩めにする、などとフィット感を2段階で調整できるのがいい。その結果、登山道に合わせて、より歩きやすくすることが可能なのである。
皮が剥けて滑りやすくなっている木の根の上でも、グリップ力は十分だ。フリクションが効き、安心感が高い。
また、宙に浮くように張り出した木の根の上を歩いていると、シューズによってはアウトソール越しに木の根の凹凸が感じられるものだ。これが長時間続くと、足裏からの刺激によって疲労が蓄積していくこともある。しかし、GK8X_FFFはアウトソールとミッドソールの弾力性に加え、内部に組み込まれた硬めのインソールボードの力で地面から受ける凹凸の感触を緩和する。そのために無用に疲れることはないようであった。
そんなわけで、一通りのテストを完了し、GK8X_FFFの実力はおおむね把握できた。だが、僕は状況が異なる他の場所でも引き続きテストを続けた。せっかくなので、これ以降はちょっとしたおまけ的に読んでいただきたい。
場所を変えて、さらなるテストを敢行!
こちらは冬の沖縄の山の中だ。
冬といっても、そこは沖縄。多湿で雨が多く、石には苔が付き、地面はぬかるんでいた。
このようにつるっとした石の上でもGK8X_FFFは滑りにくい。とはいえ、足を置くとはがれるような苔が付いていると、さすがに少し滑ることは避けられないのだが、少々滑ったとしても足首まで覆われたアッパーによって捻挫を起こすまでには至らない。
ぬかるみの中でもある程度のグリップ性を発揮してくれるのは、アウトソールのブロックのミゾが深いからだろう。
もっとも、完全に泥になってしまえばグリップ力がいくらあってもどうしようもなくなるが、アウトソールのミゾが浅いシューズよりはだいぶいい。
思い切って沢の中にも歩を進めてみる。
テスト時は雨が降らなかったため、シューズをあえて水没させるためだ。
しかし、ゴアテックスを使った防水性は完璧。温度や湿度のわりにシューズ内部が蒸れなかったのは、同じくゴアテックスの透湿性の高さゆえだ。
岩の上でも改めて歩き心地をチェックする。
南国らしいザラつきのある岩の上は言うまでもなく、風化して丸みを帯びた石の上でもスリップはなく、なにも問題はない。
トゥバンパーもしっかりと働いてくれた。
小石が散らばった登山道も長時間歩いてみた。
初回のテストと大きな差は感じられず、やはり歩き心地は上々だ。今回のリニューアルの最重要ポイントである「キャラバンFUJIKURAトレックソール」の安定感は、たしかなものだと確信したのだった。
ハードな登山道でこそ、進化を発揮する「GK8X_FFF」
というわけで、進化した定番品である「GK8X_FFF」。アウトソールのグリップ力とフリクション、そして足首をホールドして怪我を防止する安定感と、どれもが高い水準で融合されていることがよくわかった。
このGK8X_FFFがとくに向いているのは、日本アルプスや八ヶ岳のような少しハードな山や登山道だろう。GK8X_FFFの岩場での滑りにくさや体のバランスを保つ力には安心感が高い。テント泊のときのように重い荷物を背負うときにも適している。
もっと柔らかで華奢なシューズで難路を歩くとアウトソールは滑りやすく、アッパーの力だけでは足首の過度の曲がりも防ぎきれず、疲労や怪我のもとになるだろう。
だが、GK8X_FFFの比較的がっしりとした構造ならば、それらの問題を十分にカバーしてくれる。
逆に言えば、緩やかで起伏が少ない登山道ではGK8X_FFFを履く必要性は少し薄れる。同じキャラバンのシューズでも、「C1_02S」や「C1_DL MID」のように、もっと軽量で柔らかなトレッキング・ハイキングタイプを選んだほうが軽快に歩け、疲れも少ないはずだ。だが、足首をたびたび捻挫するような方は、どんな山でも怪我の防止効果が高いGK8X_FFFを選んでもよいだろう。
まずは店頭で足を入れてみてほしい。できるだけ安全に山を歩きたいとき、岩場や急傾斜が続く山に登るとき、自分の実力では少し難しいような山へ挑戦するときなど、GK8X_FFFはきっとあなたの力になってくれるに違いない。
文・写真=高橋庄太郎
今回レビューした商品
GK8X_FFF ¥29,700 (税込)
カラー/サイズ:
191ブラック/グレー/ 22.5~29.0・30.0cm
440ブラウン / 22.5~29.0・30.0cm
全2色
重量/約675g(26.0cm片足標準)
