山道具のなかで、トレッキングポールは “ 必携 ” といえるものではない。だが、一方では状況に応じて使用する “ あれば便利 ” な装備の代表格でもある。僕自身、起伏が緩くて歩きやすい山域での日帰り登山程度ならば、あまり使うことはない。しかし、重い荷物を背負うテント泊山行や、登り下りが激しくて疲れそうなルートなどでは、いつも頼りにしている。持っていくのを忘れると「今回は大変かもしれないな……」と、少し気が重くなってしまうほどだ。だから、自分のクルマには常に予備のトレッキングポールを載せたままにしておいて、いざというときに備えている。
素材は軽量なカーボンで、なんとペアでも約356g!
さて、今回ここでピックアップするのはレキの「スカイテラFXカーボン」だ。2025年に登場し、そのまま売り切れ続出になってしまったという人気モデルである。

詳しく見ていこう。その特徴は、ずばり “ 軽量性 ” だ。シャフトのメインの素材は、軽量でも耐久性が高いカーボン。そのために左右一組で約356g、片方だけならば、たったの約178gなのだから、驚いてしまう。
3分割して折りたためるスカイテラFXカーボンには「コア・ロッキングデバイス」というシステムが使われている。簡単にいえば、いったん伸ばしたシャフトを、そこからさらに少し強めに引っ張れば固定および解除できる仕組みだ。シャフトをスピーディに連結できるだけではなく、簡単に固定したり、解除したりできるのがすばらしい。

長さの調整も可能で、その幅は110~130㎝。3分割されたシャフトのうち、いちばん上のシャフトに付けられたレバーで無段階に調整できるが、長さの目安として5段階のラインが引いてあるのが親切である。

収納サイズは40㎝になり、伸ばしたときの1/3程度。収納袋も付属している。
この3本のシャフトの直径は、上から直径14㎜、12㎜、12㎜。それらはコードでつながっている。

ちなみに、同じように3本のシャフトを使い、素材も同じくカーボンの「マカルーFXカーボン」(次の写真の左側)は、直径18㎜、16㎜、14㎜。数値にするとわずかな差にも感じられるが、スカイテラFXカーボンよりも明らかに一回り太い。

ただ、スカイテラFXカーボンの「白」は膨張して見える色だ。そのために次の写真では太さの違いが少しわかりにくいかもしれないが、それはあくまでも目の錯覚である。

また、マカルーFXカーボンの重量はペアで約508gとなっていて、スカイテラFXカーボンと比べると重量の差はあきらかだ。この重量に大きく関係する太さの差は、強度に直結する。スカイテラFXカーボンは軽量性では秀でるものの、シャフトの径が太いモデルほどは耐久性が高くないということは念頭に入れておいていただきたい。
グリップも小ぶりで細く、重量バランスも抜群
では、実際に山中を歩きながら、より細かくチェックしていこう。

なお、僕は身長178㎝だが、個人的な好みでトレッキングポールをかなり短くして使用することが多い。そのために、このテストのときは姉妹モデルの「スカイテラFXカーボン コンパクト」を使用した。その違いはシャフトの長さのみで、伸縮サイズ100~120㎝、収納サイズ39㎝となり、重量は約346gと10gほど軽い。しかし、基本的にはスカイテラFXカーボンとほぼ同一のモデルである。
手に持ってみてすぐに実感するのは、やはりその軽さだ。そして既存のレキのトレッキングポールと比べて、かなり細身に設計されているグリップに「なるほどな」と思わされる。

このグリップは「ヴァーティコン・グリップ」と呼ばれるもので、軽量化のために少し小さめに作られている。レキにはレディスタイプを用意しているモデルもあるが、スカイテラFXカーボンが採用しているヴァーティコン・グリップはユニセックスモデルでありながら、レディスタイプのような細身なのである。これまでのレキのモデルに慣れている人のなかには、使い始めの時期は少し戸惑うかもしれない。
グリップ部に連結しているのは「D-ループメッシュストラップ」だ。

薄手だが肌へのなじみがよく、速乾性に優れているため雨水や汗で濡れても乾きが速い。

この薄手のストラップもスカイテラFXカーボンの軽量性に貢献している。

長さの調整がしやすいのも大きなポイントだ。グリップに対してストラップを上に向けて引っ張ればロックがリリースされ、下に引けば再びロックされるのである。寒い時期はグローブをしたままでも簡単に行えるだろう。
スカイテラFXカーボンはただ軽量なだけではなく、重量バランスもよい。

歩行中に両腕をスムーズに振ることができ、腕の疲れを軽減できる。持って歩いているのを忘れてしまいそうだ。

それでいて十分な前方への推進力を得ることができ、歩行中に体のバランスを崩したときはしっかりと体を支えてくれる。
軽量化の追求は、先端のバスケットにまで!
スカイテラFXカーボンの軽さの秘密は、先端に付けられた円形のバスケットにもある。ノルディックウォーキングポールに採用されているバスケットで、他のトレッキングポールに標準装備されているものよりも少し小ぶりなのだ。

先端のチップ(石突き)は他のトレッキングポールと同様で、その上にはスリップレスラバーロングをキャップのようにかぶせて使用する。

なお、近年は登山道の保護のためにスリップレスラバーロングを装着して使用するのが推奨されるが、雪山や岩場では外して使ったほうが地面をしっかりととらえてくれるので安心だ。

スリップレスラバーロングの内側には金属のリングがあり、先端のフレックスチップと嚙み合って簡単には脱落しないようになっているが、まっすぐ引っ張れば楽に取り外せる。ただし、フレックスチップに泥汚れが付着していたり、岩稜帯での使用によって擦れて削れたりするとスリップレスラバーロングが外れやすくなるので、その点は留意したい。
ただ、このバスケットは小ぶりゆえに締まった地面の上では問題なく使えるが、ぬかるんだ場所では深く刺さりすぎることもある。

そのような状況が想定される場合は、レキの他のバスケットにチェンジするといい。わざわざ別途購入しなくても、既存のレキの製品を使っている方はそこから外してつけ替えればいい。

スカイテラFXカーボンは長さの調整も簡単である

レバーを引き上げてシャフトを伸縮させ、再びレバーを下げるだけで完了するのだ。

このレバーの固定力はダイヤル状のパーツを回せば変更できる。キツすぎてレバーの上げ下げがしにくいときや、使用中にシャフトが緩みやすい場合は、この部分も適度に調整しよう。
軽量さゆえの特徴を踏まえ、発揮させる機能
使い始めて数時間。長く使えば使うだけスカイテラFXカーボンの軽さがますます印象的になってくる。正確にいえば、むしろ持っていることを意識させないのだ。僕はこれまでにさまざまなレキの製品を使ってきたが、やはりスカイテラFXカーボンの軽さは特筆すべきものがある。

当初はグリップの細さがいささか気になったものの、あっという間に慣れてしまった。
このヴァーティゴン・グリップはEVAフォームで作られており、手の平へのなじみがいい。また、24㎝ほどの長さがあり、登り坂では下のほうを握って短い状態で使ったり、反対に下り坂ではいちばん上のヘッド部分を握って長くしたりして使用することもできる。

ただ、このグリップは先に述べたように少々細身だ。グリップの下のほうはとくに細いためにかなり力を入れて握らないと手の平から抜け落ちやすい。ヘッドも小さいために、あまり強くは体重をかけられない。このあたりは軽量化を重視したトレッキングポールなので仕方がない。スカイテラFXカーボンならではの特徴を理解して使うべきだ。
もうひとつ注意すべき点は、おかしな方向への無用な力がかからないようにすることである。

適切に使っている分には、登り道で思いっきり両腕に力をかけても、まったく問題はない。重力によって登り道以上に負担がかかりやすい下り道でも、スカイテラFXカーボンはしっかりと僕の体重と荷重を支えてくれる。

一般的な登山道でのんびりと歩いている限りは、安心して使えるトレッキングポールであることは間違いない。
だが、周囲に岩のように引っ掛かりやすいものが多いような場所では、少し気をつけたほうがいいのである。

というのも、岩の間にトレッキングポールが挟まったままの状態で過度の力がかかると、てこの原理で強い負荷がかかり、簡単に折れてしまうからだ。

これはどんなトレッキングポールにも言えることではある。しかし、細身のスカイテラFXカーボンはその軽量性と引き換えにシャフトが細いために、耐久性がいくらか低くなっている。そのために先にお見せしたマカルーFXカーボンのようにシャフトの太さが一般的なものに比べると、どうしても破損しやすいのだ。同様に滑って転んだ際にトレッキングポールの上に倒れ込んだりしても、そのはずみで折れる可能性がある。
どんなものでも、軽量にすれば耐久性が低下し、耐久性を高めれば重量が増すものである。繰り返すが、スカイテラFXカーボンの軽さは、多少強度が下がっても、細身のシャフトや小ぶりのグリップを採用したことから生まれている。

そのことをしっかりと理解し、余計な負荷がかかれば破損するリスクが生じることは、頭に入れておきたい。
なお、僕はスカイテラFXカーボンを昨年からテストし始め、すでに25日以上も使っている。じつはかなり気に入ってしまい、最近はこればかりなのである。しかし注意しながら使用していることもあり、破損は一切していない。じつのところ、これだけ細身で華奢なのだから何かの拍子に折ってしまうのではないかと想像していたが、実際は細身のシャフトながらも想像以上に高い強度をキープしているようで、さすがはトレッキングポールの代名詞であるレキというブランドならではの高品質だと感じた。
収納時のコンパクトさも大きなメリット
個人的には、シャフトが細身のために2本まとめて折りたたんで束ねても径が太くならず、コンパクトになる点が大いに気に入った。

折りたたんだ長さが40㎝しかないということもあり、バックパックのサイドに差し込んでも邪魔にならないのだ。これはバックパックの横幅が抑えられるうえに、トレッキングポールの先端が高く飛び出ないということにつながる。だから、木の枝に引っ掛かったり、他の人にぶつかったりせず、安全に持ち運べるのであった。
ただ、コンパクトに収納ができるとはいえ、公共交通機関での移動の際には、できるだけ外付けせずにバックパック内に収納するか、胸の前で手に持つことを意識してほしい。トレッキングポールを外付けしたまま混雑している場所を移動したために、トラブルが少なからず発生しているためだ。
世の中にはトレイルランニング向けのタイプのように、もっと細くて軽いトレッキングポールも存在している。しかし、破損しやすいことは否めない。その点、スカイテラFXカーボンはそこまで耐久性を犠牲にしているわけではなく、軽量性と強度のバランスに優れている。一般登山でも使いやすく、トレッキングポールに軽量性を求める方には、魅力的な選択肢のひとつになるはずだ。
文・写真=高橋庄太郎
今回レビューした商品
スカイ テラ FX カーボン ¥31,350 (税込)
【カラー/サイズ】
110 ホワイト 全1色
110~130cm(収納時40cm)
重量/約356g(組)


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