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岩場も得意なザンバラン「サラテ トレック GT RR」
イタリアブランドらしい色使いとデザイン性が映える、2024年新作のファスト・トレッキングシューズ『サラテ トレック GT RR』をレビュー!
足に優しいソフトな履き心地!
岩場も得意なザンバラン「サラテ トレック GT RR」
2023年に新感覚のトレッキングシューズとして、「サラテ 5.13 GT」を発表したイタリアのザンバラン。この “ サラテ ” シリーズの新作として発売されるのが、今回紹介する「サラテ トレック GT RR」だ。ローカットのような履き心地と軽量性がウリのサラテ 5.13 GTの後を追うニューモデルとして、サラテ トレック GT RRはどのような実力を持っているのか? 早速テストを行なってみた。
アプローチシューズのニュアンスを持つトレッキングモデル
サラテ トレック GT RRに使用されているメイン素材は、防水性に優れたハイドロブロック・スエードレザーで、厚みは1.6~1.8㎜。一見では硬そうな素材感だが、じつは非常に柔らかだ。そして、重量約480g(EUR42片足)と軽量だ。
アッパーの丈は一般的なミッドカットよりもかなり高く、ハイカットに近い。だがハイドロブロック・スエードレザーの柔らかさに加え、足首周りの黒いクッション性素材も非常にソフト。だから、ハイカットどころか一般的なミッドカットのシューズ以上に、柔軟な履き心地になっている。
また、足首のクッション部分はアキレス腱側が少し低くなっていて、歩行時の動きを妨げない。
このあたりも、履き心地の柔らかさにつながっているのである。
レザー主体のアッパーなのに、驚くほどの柔らかさ
シューレースはつま先近くまで配置され、シューズ先端までのフィット感を高めている。
サラテ トレック GT RRは、モデル名に「トレック」という言葉が入っているように、トレッキングシューズに分類される製品だ。しかし、このあたりはまるでアプローチシューズのような特徴である。しかし、一般的なアプローチシューズならば、アッパーやアウトソールはかなり硬い場合が多いのだが、サラテ トレック GT RRは見た目と異なり、アッパーもアウトソールも柔らかい。これは2023年発売のサラテ 5.13 GTと共通する特徴で、とてもユニークだ。
アッパーの中央部分には少し切れ込みが入っており、ただでさえ柔らかなシューズの屈曲性をさらに高めている。
こういう細かな配慮はうれしいものだ。
タン(ベロ)の部分に使われている素材も同じレザーである。
タン全体が一枚のレザーなのではなく、途中で黒い柔らかなクッション性素材に構造パターンを切り返してあり、こんなところでも柔軟性を高めてある。
先ほど述べたアッパーのサイドのクッション性素材は、柔らかいだけではなく、弾力性も十分だ。
前後左右に曲がり、足首を程よくサポートしてくれる。
そのアッパーの内側の生地は吸汗性に優れ、通気性も高い。
サラテ トレック GT RRは内部に防水透湿素材のゴアテックスの中でも、とくに運動量が多く発汗量の多いアクティビティに適した【ゴアテックス エクステンデッド コンフォート】を使っており、それとのコンビネーションにより、内部をドライに保つ効果が発揮される。
指先からかかとまで、強靭な素材でしっかりガード
アッパーなどの柔らかさに対し、つま先からかかとをカバーするランドの部分は硬い。
難路でも指先を守る効果は高く、安心して使用することができる。
かかとの部分は立体的に丸みを帯び、内側のヒールカップへのかかとの収まりもよい。
かかとをしっかりと守りながら、歩行中の安定性にもつながっている。
アウトソールに使われているのは、ヴィブラムPepe(MEGAGRIP)。
足の動きに合わせて曲がりやすいうえに、滑りにくいメガグリップの素材である。
つま先のラグのパターンは平面的で、岩場では細かな凹凸をとらえやすい。
アウトソールのかかと部分はさらに平面で、狭い岩場での安定性を増す効果が高い。
シューレースの配置に加え、このあたりもアプローチシューズのような特徴ともいえる。
泥がこびりつきにくいアウトソールと弾力性が高いインソール
このアウトソールの凹凸は比較的浅く、それぞれの凹凸の間も広い。これもまたアプローチシューズによく見られる特徴である。
泥がこびりつきにくい形状なのは大きなメリットだが、凹凸が浅い分だけ摩耗が進むとアウトソールのミゾは失われていく。しかしサラテ トレック GT RRのアウトソールは交換可能。滑りやすくなってきたと感じたら、早めに交換することをお勧めしたい。
シューズ内部には立体的で体重を効果的に分散するインソールが収められている。
インソールはシューズのクッション性や通気性などにも関わる重要パーツだが、ここをおろそかにしているシューズメーカーもなくはない。だが、このサラテ トレック GT RRをはじめとするザンバランはインソールにも気を使い、シューズ内部のコンディションの向上にも大きな注意を払っている。
……というのが、サラテ トレック GT RRのおおまかな特徴だ。簡単に言えば、アプローチシューズとトレッキングシューズの中間的位置にあり、アプローチシューズとトレッキングシューズのよい部分を組み合わせたシューズともいえる。登山靴はタイプによって、アルパインシューズ、アプローチシューズ、トレッキングシューズ、ハイキングシューズ、トレイルランニングシューズなどとカテゴライズされているが、近年はシューズの進化に伴ってその境目が曖昧になっている。そういう意味では、サラテ トレック GT RRも時代の最先端を行くシューズのひとつといえよう。
では、ここからは実際に履いてみての印象を、より具体的にお伝えしていきたい。
履きならしの必要は最低限!? 違和感のない履き心地
足を入れてみてすぐに感じるのは、やはりサラテ トレック GT RRが持つ柔らかさだ。
レザーという素材は履きなじむまでに少し時間がかかるものだが、ハイドロブロック・スエードレザーはとにかく柔らかく、僕には履きならしの必要がなかったほど。多くの方も履きならすまでに時間はあまりかからないと思われる。
履き始めた直後から違和感なく歩けるというのは、すばらしいことだ。
岩肌でも安心感が高いメガグリップのアウトソール
サラテ トレック GT RRは岩場に強いアプローチシューズのよさを取り入れたトレッキングモデルということもあり、積極的に岩場を歩いてみた。
メガグリップのアウトソールは岩肌を吸い付くようにとらえ、歩き心地は上々である。
試しに急な角度の岩の上を歩いてみたが、まったく滑るようなことはない。
つま先を使って蹴り出した際の安定感も十分である。
サラテ トレック GT RRはトレッキングシューズに位置づけられるモデルとはいえ、アプローチシューズ並みの岩場への強さを感じさせてくれる。
硬いラバーによる、つま先の保護力も申し分ない。
わざと何度か力をこめて岩を蹴ってみると、さすがに大きな衝撃は受けるものの、痛みを覚えることはなかった。
ストレスを感じさせない柔らかな屈曲性
柔らかなアッパーによる屈曲性のよさも想像通りだ。しかも靴自体の硬さや剛性を決定づける足底に配置されたインソールボード自体がとても柔らかなタイプを採用しており、これもまた屈曲性を高める大きな要因にもなっている。
アッパーに入れられていた屈曲性を高めるための切れ込みも十分に機能している。
そのために足の動きにシューズのアッパーがきれいに追従し、ストレスをほとんど感じないのがよくわかった。
話が少し逸脱するが、ぼくはこの発色がきれいなイエローのカラーリングがとても気に入った。なんと青空に映えるのだろう。
なお、サラテ トレック GT RRは他にレッドとブラック/グレーのカラー展開(全3色)があり、好みに合わせて選ぶことができる。
その柔らかさで、前方への蹴り出しやすさも良好!
次にシチュエーションを変え、森の中を歩いてみた。
そのモデル名からいっても、サラテ トレック GT RRはこのようなトレッキングのフィールドに適しているはずだ。
サラテ トレック GT RRは、森の中の地面になるとその柔らかさが強調される。
アッパーとアウトソールが柔軟なので、軽い力で前方へ蹴り出しやすく、体重移動がスムーズだ。だから、長時間歩いても疲れが少ない。これが硬めの一般的アプローチシューズだったら、そうはいかない。
湿った地面の上を歩いていると、どうしてもアウトソールには土がこびりつく。
しかし、凹凸の間が広いので、いつまでもこびりついているわけではなく、歩いているうちに自然と落ちていく。そのために歩行感を損なうようなことはない。
ただ、凹凸が浅いアウトソールは、泥で深くぬかるんだ場所ではどうしても滑りやすい。いかに優れたシューズでも、万能ではないのである。そういう場所では少し注意しながら歩いてほしい。
防水性は確実。雨の日でも気にせず使える
ゴアテックスを使用したサラテ トレック GT RRは、防水性も確かなものであった。
アッパーのレザーは薄手のため、水に長時間つけていると少しずつ冷たく感じてはくるが、浸水しているわけではなく、水から出れば体温は回復していく。もちろん気温が高い時期ならば、もともと冷たくなることもない。
最後に、サラテ トレック GT RRを雪の上でも試してみようと、凍てついた山にも入ってみた。
もともと雪山用のシューズではないので、適していないことは承知の上。
あくまでも僕の興味からの “ 余談 ” である。
結論を言えば、“ 意外といける ”。
アウトソール全体をベタっと雪の上につけると滑ることもあるが、アウトソールのエッジを効かせて歩くようにすれば、思いのほかグリップして体が止まる。アッパーが薄いので、足先は冷えやすいが、春先にうっすら残る雪の上くらいは行けなくもない。もっとも、ザンバランならばバルトロ ライト GTのようなシューズのほうが残雪の上では活躍するだろうが、状況によってはサラテ トレック GT RRの出番もあり得る。
耐久性と柔軟性を両立したトレッキングシューズの誕生
柔らかくて軽いサラテ トレック GT RRは、アプローチシューズのエッセンスを取り入れたトレッキングシューズとして、まさに現代的な登山靴であった。
森林限界以下の森の中から、森林限界を超えた岩場まで、適したフィールドは非常に広い。柔らかいシューズゆえにテント泊のような重い荷物を背負った登山にはあまり合わないかもしれないが、身軽に動ける小屋泊や日帰り山行ではまさに本領を発揮するはずだ。
それにしても、一見では硬そうなのに、これだけ柔らかさを感じさせるとは驚きだ。化学繊維を使ったアッパーのシューズならともかく、耐久性が高いレザーを使ったシューズで、これほど柔らかな履き心地のものはちょっと珍しい。
軽量なために足さばきもしやすく、長時間でも疲れが少ないのも大きなメリットだ。僕は大いに気に入ってしまい、このレポートを書くための数回のテストの後も、じつはかなり使いこんでいる。興味がある方は実際に手に取り、できれば試履きして、この柔らかな履き心地をぜひ体験していただきたい。
文・写真=高橋庄太郎
今回レビューした商品
サラテ トレック GT RR ¥39,600 (税込)
カラー/191ブラック/グレー、220レッド、330イエロー 全3色
サイズ/EUR38~48(約24.0~29.0cm)
重量/約480g(EUR42片足標準)